ＳＡＢＡＫＡＮ
サバカン

　これは、「ミッドナイトスワン」の制作会社・ＣＵＬＥＮによる青春ドラマ。
　監督・脚本は、ＴＶドラマ「半沢直樹」の脚本を手掛けた金沢知樹。

　小説家の久田は、新作小説の準備中、サバの缶詰を見て、少年時代の友人を思い出す――１９８６年、長崎。久田は小学校５年生だった。同級生の竹本は家が貧しく、クラスでは除け者扱いをされていた。
　夏休みの初日、久田の家に突然竹本がやって来て、「一緒にイルカを見に行こう」と誘う。
　翌日、久田は竹本と共に、イルカが現われたと言うブーメラン島を目指すのだが……

　この映画、草�g剛が主人公のような予告編ですが、草�g剛演じる現在の久田は、プロローグとエピローグにしか顔を出さず、物語としては、過去の少年時代のエピソードが中心となります。
　少年時代の久田は、ＴＶドラマ「おかえりモネ」の番家一路、その両親は竹原ピストルと尾野真千子が演じます。竹本は原田芳雄の孫である原田琥之佑が演じて、祖父を思わせる無頼漢の片鱗を見せています。

　その久田の少年時代の物語、前半は、さながら和製・「スタンド・バイ・ミー」とでも言える内容です――少年の、ささやかながら、初めての冒険……事故やトラブル、そして、綺麗なお姉さんに、強くて頼れる兄貴との出逢い……イルカには出会えなかったけれど、少年は、一夏の思い出と、かけがえのない友を得るのです。
　かつて少年だった大人なら誰しもが羨ましく思えるような一夏を過ごした先に待っていたのは、突然の別れ。
　そこで見せる、意外なまでの父の男らしさと、母の優しさが胸を打ちます。
　エピローグとなる現代パートも語りが大半で、友との再会の後はばっさり省略……これもまた余韻を残す感じで好印象でした。

　爽やかな少年の夏の友情物語に涙してしまいました。　
　

　（２０２２年　８月２１日　Ｋｉｎｏシネマ横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

金沢知樹

　■出演

　久田孝明（現代）　　　　・・・　草�g剛
　久田孝明（子供時代）　・・・　番家一路

　竹本健次　・・・　原田琥之佑

（その他のキャスト）
　尾野真千子　　竹原ピストル　　貫地谷しほり　岩松了　　村川絵梨　　福地桃子
　ゴリけん　　八村倫太郎　　茅島みずき　　篠原篤　　泉澤祐希

　■コピー

ここは’８０年代。
子供が主役です。

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