ハーティ
森の神

　これは、「バーフバリ」シリーズの敵役、ラーナー・ダッグバーティ主演のアクション・アドベンチャー。

　スミトラナンダンは、先祖代々保有して来た森を、保護区として政府に譲渡し、野生のゾウたちと共に森を見守りながらひとり暮らしていた。そんな彼のことを、人々は敬意を表して“森の神”と呼んでいた。
　だが、新任の環境大臣が、約束を反故にして巨大企業のリゾート施設開発のため、彼の森の開発に着手する。森の神は、森とゾウを守るため開発を阻止しようとするが、逆に罠に嵌められて投獄されてしまう……

　この映画、どうにも物語に乗れず――これは、本国公開版に対しダンスや音楽を最小限にカットした、インターナショナル版だと思います。その為、歌やダンスで心情を語る部分がカットされているが故に判りにくくなっている可能性はあるとは思うのですが、それにしても、これは酷いのではないでしょうか。
　“森の神”と、環境大臣＆開発会社と言う対立軸、この善悪の対立は判り易いのですが、その周辺の人物――開発会社に雇われたゾウ使いや、反対派武装勢力の考えてる事がどうにも判らないし、また、“森の神”を追いかける女性ジャーナリストの立ち位置や、存在も曖昧……この辺が、物語を盛り上げる為のご都合主義的に見えてしまうのが感情移入を削ぐ所です。
　また、主人公である“森の神”スミトラナンダンにしても、無用に暴力的であったり、過度に感情的であったり、と支離滅裂とまでは言わないけれど、場当たり的に行動しているように思えてならないのです。

　物語の基本である、自然と環境の保護と、利益追求の為の開発の対比、それに権力者の横暴と、汚職……と言う図式は判り易く、それが民意によって正されると言う筋自体も、明瞭かつ、普遍的なものであろうと思うだけに、その中で迷走しているように思う登場人物たちがもどかしく感じられました。
　

　（２０２０年　７月３０日　川崎チネチッタにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

プラブ・ソロモン

　■出演

　スミトラナンダン　・・・　ラーナー・ダッグバーティ

（その他のキャスト）
　シュリヤー・ピルガオーンカル　　ゾーヤー・フセイン　　プルキット・サムラート

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