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号
棟

　これは、岐阜県富加町で起きた幽霊団地事件を基に企画された考察型恐怖体験ホラー。
　主演は、「３７セカンズ」や、「成れの果て」などで強い存在感を見せている萩原みのり。監督・脚本は「リトル・サブカル・ウォーズ　ヴィレヴァン！の逆襲」の後藤庸介。

　死恐怖症（タナトフォビア）で、現実主義者の女子大生・史織は、元彼の啓太と、その恋人の真帆が、卒業製作で撮影しようとしているホラー映画のロケハンに付き合って、霊が出るという噂で有名だった廃団地を訪れる。
　だが、寂れた団地には多くの住民がおり、３人は不法侵入だと咎められる――史織は、咄嗟に「転居を考えており、内見に来た」と言い訳をし、管理人に団地内を案内して貰うのだが……

　この映画、「ミッドサマー」を手本としているのは明確です。
　団地と言う集合住宅の持つ、それこそ、近所に誰が住んでいるのかも判らない、そして、団地そのもののコミュニティもまた外部からはよく判らない、と言う二重の閉鎖性に着目した舞台設定は悪くないですし、生と死、そして霊魂の存在を問いかける物語テーマもしっかりしています。そして、萩原みのりと言う女優の個性を、よくも悪くも活かした主人公・史織のキャラクターもいい。
　この徹底した現実主義者の史織が、超常現象に直面し、そこにトリックがあるのではないか？と真相を暴いてやろうとする展開もよいのですが、残念ながら、この映画“、幽霊団地”内のコミュニティに説得力を持たせる事が出来ていないのです――死者と共存するコミュニティ、と言う狙いはいいのだから、その点以外、人々が生きている、その暮らしをしっかり描かなければ、そこに“それ”が存在する、と言う怖さを演出出来ないのではないでしょうか？

　そんな印象もあり、映画中盤以降、どうにも設定を活かせていない感じがもどかしく、終盤の混乱と失速も惜しい。
　「ミッドサマー」と言うお手本を得ながら、意あれど力足らず、と言う感じです。　
　

　（２０２２年　６月２５日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

後藤庸介

　■出演

史織　・・・　萩原みのり

真帆　・・・　山谷花純
啓太　・・・　倉悠貴

（その他のキャスト）
　筒井真理子　　岡部たかし　　諏訪太朗　　赤間麻里子

　■コピー

これは夢か、幻か、現実か、
それとも・・・

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