これは、トム・クルーズ主演のスカイアクションの名作、「トップガン」の３６年ぶりの続編。監督は、「オブリビオン」のジョセフ・コシンスキー。
　
　アメリカ海軍の戦闘機パイロットとして数多の戦功に輝くピート・“マーヴェリック”・ミッチェル大佐。型破りで組織に縛られない振る舞いから、未だ将官へ昇進せず、現役であり続けていた。
　そんな彼に、かつてのウィングマンで今や海軍大将となった“アイスマン”の特命が下り、トップガンの教官を務める事になる。トップガン卒業生を集め、困難極まりない特殊作戦を遂行するのだ。
　そうして集められたパイロットの中に、マーヴェリックのかつての相棒で、トップガンで訓練中に事故死した“グース”の息子、ブラッドリーがいて……

　３６年ぶりの「トップガン」ですが、映画はかつてのオープニングシーンを踏襲……お馴染みの音楽とタイトルバックの後に、ケニー・ロギンスの「デンジャー・ゾーン」をＢＧＭに空母での艦上機発進シーンが描かれます――もう、これだけでまるでタイムスリップしたかのように、「トップガン」世界に引き込まれます――実は、このシーン、その後の展開と全く繋がらないのだけど、「トップガン」の始まりはこれしか考えられないのだから、これはこれでいいでしょう。
　その後、まるで「ライトスタッフ」のような極超音速テスト飛行を描くのだけど、これまた後の展開に繋がらないのに、やたら気合いが入っています――機体は映画オリジナルだけど、ロッキード社の“スカンクワークス”の監修が入り、上官役はエド・ハリスだったりするのですから。

　それからの展開は、「トップガン」そのままと言っていいでしょう。訓練があり、恋があって、葬儀があり、そして、特殊作戦への出動と実戦……前作では、Ｆ−１４「トムキャット」と言うゴージャスで見栄えもする戦闘機が主役でしたが、今回は、Ｆ−１８「ホーネット」なのでどうかと思ったけれど、Ｆ−１８もなかなかどうして、コブラ機動までやる機動力の高さを見せるなど、存在感ばっちり。
　元々、「トップガン」は、アニメ「超時空要塞マクロス」に登場する可変戦闘機ＶＦ−１「バルキリー」のカッコよさに惚れ込んだものの、アニメでは太刀打ち出来ないので、実機を飛ばしてアクションを撮る、と言うのがスタートだと言われますが、実機に拘る姿勢は本作でも同様。今回は、戦闘機のコックピットにＩＭＡＸカメラ６台を持ち込み、空撮だけではなく、パイロットの表情を克明に捉え、リアルな迫力を生み出しています。このスカイアクションは、本作の最大の見所でしょう。
　また、特殊作戦での相手は、今回はＦ−５戦闘機にＭＩＧ戦闘機を演じさせるような事はなくＣＧで描かれた“第五世代戦闘機”（Ｓｕ-５７）なのですが、その空戦の相手が、なんとＦ−１４と言う大サービス、と言うか驚きの展開……これにはやられた、と言うしかありません。

　物語と展開は前作を踏襲するにせよ、トム・クルーズも、そして劇中のマーヴェリックも歳を取り、それ故に、かつてのような脳天気なノリを見せるばかりではありません……沈痛な表情を見せる事も多く、ここまでトム・クルーズが悩む姿を演じるのも珍しいのではないでしょうか。
　まぁ、それも年相応、と言うものであり、その一方でジェニファー・コネリー演じるペニー相手の、まるで若者のような恋愛劇の方がちょっと外しているように思えたのも事実です。

　気になったのは、やはり、トム・クルーズの“俺様”演技……まぁ、これについてはいつもの事、とは思うものの、そろそろ若い者を立ててやった方がよいのではないでしょうか。
　あと、やたらと夕陽で赤く染まったシーンを多用するので、カリフォルニアは四六時中夕方か、と皮肉を言いたくなってしまいました。
　
　それと、本作は多くの映画へのオマージュシーンが目立つのも特徴――そもそも、前作「トップガン」がその対象であるのですが、その他にも、「愛と青春の旅立ち」や「ウィンズ」など……そして、特殊作戦の内容である、狭い渓谷の中を飛び、目標にピンポイントで爆弾を当てる、と言うのは、「スターウォーズ」そのままではないですか。

　本作を楽しめるのは、前作を知る年配層のように思えますが、迫力あるスカイアクションは、これだけ観ても充分に堪能出来るものなのは確か。ただ、この更なる続編が企画されている、と言われますが、それはさすがに無理があるのではないでしょうか？　
　

　（２０２２年　５月２９日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

ジョセフ・コシンスキー

　■出演

ピート “マーヴェリック” ミッチェル　・・・　トム・クルーズ

ブラッドリー・ “ルースター” ・ブラッドショー　・・・　マイルズ・テラー

（その他のキャスト）
　ジェニファー・コネリー　　ジョン・ハム　　エド・ハリス　　バル・キルマー　　グレン・パウエル　　モニカ・バルバロ　　ルイス・プルマン
　ジェイ・エリス　　ダニー・ラミレス　　グレッグ・ターザン・デイヴィス　　バシール・サラフディン

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