これは、アニメ業界を舞台にした辻村深月の同題小説を、「水曜日が消えた」の吉野耕平が映画化したもの。
　主演は吉岡里帆。共演は中村倫也、柄本佑、尾野真千子と実力派を揃えています。

　ＴＶアニメ「サウンドバック　奏の石」で監督デビューが決定した斎藤瞳。だが、放送枠は土曜夕方５時のアニメ・ゴールデンタイムで、ライバルは、瞳が憧れる天才アニメ監督・王子千晴の復帰作「運命戦線リデルライト」だった。
　そんな過大なプレッシャーに押し潰されそうな中、アニメイベントで行われた公開対談で、瞳は王子千晴に「絶対に勝つ」と勝利宣言をしてしまい……

　２回目の観賞。２回目も、これはよかった。やはり、泣けます。
　もっとも、２回目になると粗も気づきます。特に後半、シーンの繋がりが悪く、テンポを削いでいる感があったのは残念に思えました。

　あと、
　「親父にもぶたれたことないのに……」
　「弾幕薄いぞ」
　「人がゴミのようだ」
　「心を開かなければエヴァは動かないぞ」
　と、アニメ台詞の引用が、みな古い――みんな前世紀の話じゃないか、って思ってしまいました。
　（まぁ、その辺りがおじさんには響くのですが）

　また、柄本佑演じる若手敏腕プロデューサーの行城は、やはりいい役だと思います。
　宣伝担当と進行の２人にブチ切れた瞳の背後にふっと現われ、
　「おふたりにお礼は言いましたか？」
　と言う絶妙のフォロー。
　その後の、
　「あなたは最初っから四番です」
　には、ぐっと来ます……ここで、瞳が食べたかったコージーコーナーのエクレアひと箱を手渡すのだけど、ここで、
　「チョコじゃない〜」
　と瞳が泣き笑いになってしまう辺りも映画としての見せ方が上手い。

　これは、お仕事映画として、そして青春映画として上々の出来。面白くて、熱くなって、泣いて……よい映画だと思います。


ＰＳ
　今回は、映画の後、帰りにエクレア買って帰りました。

　（２０２２年　５月２８日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

吉野耕平

　■出演

斎藤瞳　・・・　吉岡里帆

王子千晴　・・・　中村倫也

行城理　・・・　柄本佑

（その他のキャスト）
　尾野真千子　　工藤阿須加　　小野花梨　　高野麻里佳　　前野朋哉　　矢柴俊博　　新谷真弓
　松角洋平　　水間ロン　　前原滉　　みのすけ　　古舘寛治　　徳井優　　六角精児

　■コピー

好きをつらぬけ。

［戻る］