ひかり探して

　これは、「１０人の泥棒たち」のキム・ヘス主演のミステリー。
　監督・脚本は、本作が長編映画デビュー作となる新人女性監督のパク・チワンで、本作で百想芸術大賞映画部門最優秀脚本賞、青龍映画賞新人監督賞を受賞している。

　台風が吹き荒れるある日の夜、ある犯罪事件の重要参考人で、人里離れた離島で保護されていた少女が遺書を残し、姿を消した――職務上の不始末により休職し、やっと復帰したばかりの女性刑事ヒョンスは、正式に復職する前の繋ぎの任務として、少女の失踪を自殺として事務処理することになる。
　しかし、再調査を進めるにつれ、人生の居場所をなくした、自身の境遇と似ている少女の人生に感情移入するようになったヒョンスは……

　この映画、パク・チワン監督のデビュー作でありながら、韓国の映画祭で高い評価を受けた、と言う事ですが、ちょっとピンと来なかったのが正直な所です。

　サスペンスとしては、過去の現在の時間軸の描写が混濁していて、状況がはっきりとせず、失踪した少女についてを探るミステリーとしての要素も弱い……そもそも、そうしたミステリー・サスペンスにするにしては、少女が巻き込まれた事件、ヒョンスが休職し、そして査問にかけられようとしている不始末が描かれず、はっきりとしないのです。
　そして、最後にはタイのマリンリゾートで、新生活を送っている少女の描写に飛ぶ――確かに、（下手したら）日本以上に女性の社会進出に未だ抵抗があると言われる韓国社会における女性の生き辛さをテーマに置いている狙いは理解したものの、それならば、このラストシーンから逆に辿り、居場所をなくした女性の再出発を軸足に置いて描いた方がよいのではないでしょうか？
　現状では、ミステリーとしては先が読めてしまい、社会性についてもとってつけたように感じられる、どっちつかずの内容になっているように思えました。　
　

　（２０２２年　５月　４日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

パク・チワン

　■出演

ヒョンス　・・・　キム・ヘス

（その他のキャスト）
　イ・ジョンウン　　ノ・ジョンイ　　キム・ソニョン　　イ・サンヨプ　　ムン・ジョンヒ

　■コピー

わたしは今日から、人生を始める――

［戻る］