ツユクサ
Tsuyukusa

　これは、「ふしぎな岬の物語」の脚本家・安倍照雄によるオリジナルストーリーを「閉鎖病棟 それぞれの朝」の平山秀幸監督が、小林聡美主演で映画化したもの。
　共演は、平岩紙、江口のりこ、松重豊など、芸達者で個性的な面子が脇を固めます。

　５０歳を目前にした五十嵐芙美は、海辺の小さな田舎町でひとり暮らし。気の合う友人たちと過ごし、友人の息子、航平くんと遊びに行ったり、それなりに楽しく暮らしていた。
　だが、そんな彼女にも、伏せたい過去があり、それがひとり暮らしをする理由となっていた。
　そんなある日、草笛をきっかけに出会った篠田吾郎と恋の予感が訪れて……

　この映画、「かもめ食堂」に代表される小林聡美がこれまで演じてきたスローライフ的キャラクターのまま、それを支持してきた観客向けて作られたものと思います。
　死別の喪失感を抱えた物語に、ふわふわとした感触を与え、まるでキラキラ映画のような、初なロマンスを描いています――これは、小林聡美の、よくも悪くも少女っぽく、中性的な個性を活かしたもので、同じ物語としても、例えば尾野真千子主演であれば、こうは行くまい、と思わせるものです。
　また、平山秀幸監督の演出も、この雰囲気に合わせ、各シーンに重さを与えず、オチもつけず、テンポよく場面を切り替えていますが、これはさすがに食い足りない、と言う印象を受けました。
　
　気になったのは、小学生の航平に狂言回しをさせて物語を始める事。航平は途中退場するので、物語視点が変わってしまうし、彼のサブストーリーも有効とは思えません――特に、航平の失恋話は不要と思いました。　
　

　（２０２２年　５月　３日　イオンシネマ座間にて）

（作品データ）

　■監督

平山秀幸

　■出演

　五十嵐芙美　・・・　小林聡美

　航平　・・・　斎藤汰鷹

　篠田吾郎　・・・　松重豊

（その他のキャスト）
　平岩紙　　江口のりこ　　桃月庵白酒　　水間ロン　　鈴木聖奈　　瀧川鯉昇
　渋川清彦　　泉谷しげる　　ベンガル

　■コピー

隕石を見つけた、
草笛が吹けた。
とっちも今の私に起きた、
小さな奇跡。

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