ＴＨＥ　ＢＡＴＭＡＮ
ザ・バットマン

　これは、「クローバーフィールド」や「猿の惑星：新世紀」のマット・リーブス監督による、バットマンのリブート作品。尚、本作は、ＤＣコミックス原作ではあるものの、ＤＣエクステンデッド・ユニバースには属さず、独立した作品となっているとのこと。
　ブルース・ウェイン／バットマンを演じるのは、「トワイライト」シリーズのロバート・パティソン。

　少年の頃に資産家の両親を殺害されたブルース・ウェイン。その原因でもあるゴッサム・シティの治安の悪さを正すべく、夜になるとマスクを被って悪を討つ、「バットマン」として活動するようになって２年――ハロウィンの夜、市長が殺害されたのを皮切りに、権力者を標的にした殺人事件が次々に発生。
　犯人は、犯行の際にバットマンに宛てたなぞなぞを残していた。そして、街の有力者の悪事が暴かれるうち、その矛先はブルース本人にも向けられて……

　「バットマン」の映画は、夜が舞台と言う事もあって、マーベルのヒーローのような明るさとは無縁……同様に、ローカルヒーローであるスパイダーマンと比べても、物語は暗く、重いものになりがちです。
　これまでのティム・バートン版、クリストファー・ノーラン版の何れもが、スーパーヒーローものとは一線を画するものとなっていました。
　本作では、その方向性を更に強め、猟奇的な連続殺人犯を追う探偵役をバットマンが務める、と言う、ヒーローものとしては異色の、“探偵映画”となっているのです。

　雨の降り続く街……現在なのだけど何処か古臭いそこは、正にフィルム・ノワールの世界。
　ただ、ヒーローものとしては如何なものか、と思わされます――派手なアクションはなく、そもそもアクションが物語と上手く噛み合ってない感がある一方で、バットマンのマスクを被って、犯行現場で証拠集めをするなど、探偵譚ならともかく、スーパーヒーロー映画としては首を傾げたくなるようなシーンが散見されるのです。
　サスペンスの盛り上がりも弱いし、ヴィランであるリドラーは、あっさりと逮捕されてしまって、殴り合いにさえならずで、マスクのヒーローらしい見せ場も少ないのが不満が残ります。

　ロバート・パティソンの起用も、ヒーローものにありがちなマッチョ思想の排除があったのでしょうけど、着ぶくれして妙にゴツくなってしまったバットマン姿を見る限り、どうにも狙いを外しているような……その重い足音のように、映画までもが鈍重になってしまったように感じます。
　また、キャットウーマンをゾーイ・クラヴィッツが演じているのですが、こちらは逆に細くて小さい……日本人的には魅力的なスタイルに感じるかも知れませんが、物語的には、こちらも違和感があります。

　映画のテーマとしては、”復讐と救済”でしょうか。
　バットマンとリドラー、ゴッサム・シティで不幸に見舞われ、両者とも街を変えようと思った――破壊と復讐を以てして。でも、そこに差し伸べられた救いの手がブルースを救った、と言うのが作品テーマであり、復讐者の貌を見、そしてキャットウーマンが差し伸ばした手に救われ、ブルースは己の為すべき事を知る……泥まみれになってガレキを排除し、市長の息子に救いの手を差しのばしたバットマンの姿は、確かに感動的ではあるものの、この構図を完成させるには、いささかピースが欠けているように思えます。最低でも、少年だったリドラーに、誰も救いの手を差し伸べなかった、と言うシーンが必要だったのではないでしょうか？　
　

　（２０２２年　３月１２日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

マット・リーブス

　■出演

　ブルース・ウェイン / バットマン　・・・　ロバート・パティンソン

　キャットウーマン　・・・　ゾーイ・クラヴィッツ

　ペンギン　・・・　コリン・ファレル

　アルフレッド　・・・　アンディ・サーキス

　ジェームズ・ゴードン　・・・　ジェフリー・ライト

（その他のキャスト）
　ポール・ダノ　　ジョン・タートゥーロ

　■コピー

マスクに隠された
　“嘘”を暴け。

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