成れの果て

　これは、２００９年度サンモールスタジオ最優秀脚本賞受賞の同名戯曲を宮岡太郎監督が映画化したもの。
　主演は、「３７セカンズ」や「街の上で」などで、脇役ながら確かな存在感を見せていた萩原みのり。共演は、「千と千尋の神隠し」の柊瑠美、「あの頃。」の木口健太。

　東京でファッション業界で働く小夜のもとに、故郷の田舎町に暮らす姉のあすみから連絡が入る。結婚すると告げたあすみの結婚相手は、布施野と言う男。布施野は、８年前、高校生だった小夜をレイプした男だった――
　小夜は居ても立ってもいられず、友人のエイゴを連れて故郷に帰る。小夜の突然の帰郷を引き金に、小夜とあすみの周りの人々の業が徐々に炙り出されて……

　妹をレイプした男と結婚しようとする姉――これは、魅力的で奔放な妹に対する、地味で控えめな姉の嫉妬心から来る復讐なのですが、あすみと小夜を取り巻く人間関係を含め、これはさすがにちょっと考えられない設定ではないかと思います……まぁ、一歩譲って、舞台劇なればこそ、虚構と知れている舞台の上だからこそ許される物語ではないでしょうか。これを映画にするならば、さすがに設定や展開の見直しが必要なのではないでしょうか。

　物語はほぼあすみの暮らす家の屋内で展開……広がりを欠く人間模様や、回想シーンの徹底的な排除も舞台劇ならではで、それを映画版も踏襲。そして、台詞の内容や、その応酬も演劇的に感じます。
　しかし、そんな映画の中で、萩原みのりがひとり、異彩を放ちます。
　物語展開的にも、閉鎖的ながらも安定して穏やかだったあすみの暮らしを破壊していくのが小夜の役回りなのですが、その小夜を演じた萩原みのりは、その役回りを超え、映画そのものを破壊しそうな存在感を示すのです――何時破裂するか判らない爆弾のように登場し、必要以上の緊張とサスペンスを生み出します。その大きな猫目が放つ目力には、悪魔的とさえ言える輝きと凄みを感じました。

　物語としては、これはあすみの復讐譚であり、ラスト、意表を突かれるあすみの爆発がそのクライマックスである筈なのですが、物語の中の小夜同様、萩原みのりがおいしい所は全部持って行ってしまい、肝心のクライマックスも切れ味と凄みを失っていたように思います。　
　

　（２０２２年　３月　７日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

宮岡太郎

　■出演

河合小夜　　・・・　萩原みのり

布施野光輝　・・・　木口健太

河合あすみ　・・・　柊瑠美

（その他のキャスト）
　田口智也　　梅舟惟永　　花戸祐介　　秋山ゆずき　　後藤剛範

　■コピー

姉が婚約したのは、絶対に許せない男だった。

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