これは、小沢かなによる漫画「ブルーサーマル-青凪大学体育会航空部-」を劇場アニメ化したもの。
　主人公のたまき役には、堀田真由が声優初挑戦。監督は「プリンセス・プリンシパル」シリーズの橘正紀。

　長崎から上京して来た都留たまきは、サークル活動や恋愛など、充実した普通の大学生活に憧れていたが、入学早々に事故で航空部のグライダーを傷つけてしまい、その弁償のために航空部の雑用係をすることになってしまう。
　だが、主将・倉持潤の操縦するグライダーに同乗させて貰ったたまきは、グライダーで飛ぶ空に魅了されて……

　この映画ですが、マイナースポーツであるグライダー競技を描いていて興味深いものがあります。
　サーマル（上昇気流）を捉まえて上昇し、高度を速度と距離に変えて次の旋回ポイントまで飛行して、周回コースの飛行タイムを競う、そこで求められるのが、如何にサーマルを見つけ、捉まえられるか、と言う事なるのです。
　雲量があれば、そもそも雲は上昇気流の上に発生するものですし、風の流れも可視化されるのですが、晴天下でサーマルを捉えるのは至難の業――それがタイトルにもなっている“ブルーサーマル”（晴天時上昇気流）なのです。
　こうしたグライダー競技の要点を巧く描くと共に、風に乗るグライダーを美しく描いているのには引き込まれました。

　ヒロインのたまきは、まるでナウシカ同様に“風が見える”と言う、グライダー乗りとしては天賦の才を持つのですが、垢抜けないドジっ子となっていますが、これは、作者が少女漫画志望だった、と言う事を考えると納得――少女マンガ定番のヒロイン像、と言う事ですね、
　そして、いがみ合っていたふたりが……と言う展開も少女漫画の定番展開でしょう。

　気になったのは、いささか詰め込み過ぎに思える内容――まぁ、原作自体、終盤、かなり駆け込み状態で強引に「第一部完」としたようですし、そこまで単行本で５巻のボリュームがあります。それを２時間弱の映画にするのですから、これは端から無理があるでしょう。
　本作も後半はかなり駆け足で、エピソードの大半がほったらかし、あるいは尻切れトンボで終わってしまい、どうにも物足りません……出来れば、前後編２部作にして欲しかった程の内容ですが、そこまでは望めなかった、と言う事でしょうか……残念。　
　

　（２０２２年　３月　６日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

橘正紀

　■出演

都留たまき　・・・　堀田真由

倉持潤　・・・　島崎信長

（その他のキャスト）
　榎木淳弥　　小松未可子　　小野大輔　　白石晴香　　大地葉　　村瀬歩　　古川慎
　高橋李依　　八代拓　　河西健吾　　寺田農

　■コピー

空に恋して、
　　仲間と出会った。

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