ハード・ヒット
発信制限

　これは、「テロ、ライブ」他、数々のヒット作を手掛けた編集マン、キム・チャンジュの監督デビュー作。爆弾による脅迫事件を描くアクション・サスペンスとなります。

　釜山で大手銀行の支店長を務めるソンギュは、いつものように学校へ送る子供たちをクルマに乗せて出勤の途中、一本の電話を受けた。それは“車から降りれば、仕掛けた爆弾が爆発する”と告げる脅迫電話。
　イタズラか、と思ったが、実際、シート下には何時の間に爆弾らしきものが仕掛けられており、しかも、同様に脅迫されていた部下の車が爆発を起こすのを目の当たりにして、ソンギュは脅迫が事実だと思い知らされる。
　しかも、部下のクルマの爆発で同乗していた息子は出血多量の怪我を負い、警察にも連絡出来ず、クルマから降りる事も許されない絶体絶命の状況の中、ソンギュは、言われるがままに身代金を工面しつつクルマを走らせるが……

　この映画、“速度を落としたら即アウト”の「スピード」を思わせる、“車から降りたら即アウト”のサスペンス。見えない犯人との駆け引き、身代金の工面、出血多量の怪我を負った息子の救命、と言う複数のタスクが畳みかける展開の前半は、正に息も継がせぬ展開で、これはキム・チャンジュ監督の巧みな編集テクニックも存分に活かされた出来で、これはなかなかのもの。

　ただ、物語の方はいささか弱い――サスペンスフルな前半部では気になる余裕がなかったのですが、中盤で海岸にクルマが止まってしまうと、テンションとテンポが落ち、途端に設定の苦しさが気になります――犯人の動機は理解出来るものの、その犯行は、単独犯としての実行はあまりに無理があるし、警察の動きも、ソンギュの制約になるだけと、あまりにも程度が悪く思えます。
　風呂敷を畳みにかかった後半は、サスペンスの盛り上がりも、ドラマも明らかに失速した感じがあります。エピローグもいささかキレが悪く、もう一工夫欲しかった所です。

　映画前半の手に汗握る感じがよかっただけに、後半部の失速が何とも惜しい感じでした。
　

　（２０２２年　３月　３日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

キム・チャンジュ

　■出演

ソンギュ　・・・　チョ・ウジン

（その他のキャスト）
　イ・ジェイン　　チ・チャンウク 　　チン・ギョン　　リュ・スンス

　■コピー

仕掛けられた爆弾
　車を降りれば即爆破
　人質は娘、そして自分――

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