これは、大阪芸術大学映像学科を卒業後、ＥＮＢＵゼミナール・映画監督コースで学んだ小村昌士の長編初監督作。
　主演は、「アルプススタンドのはしの方」で存在感を示した小野莉奈。

　地方局の番組でチャリティ番組のオフィシャル・サポーターを務める１９歳の柏倉リンは、「世界平和」を謳って募金を呼びかけている。でも、その手応えの実感はなく、実生活も上手くいかないことばかり――番組スタッフらの“他愛のない会話”にのれず、“盛り上がる雰囲気”にも疎外感を覚えるばかりで、ずっとひとりでいた。
　副業の駐車場受付もひとりだし、家に帰っても話し相手はＡＩスピーカーのみ。
　そんな中で、ついに “ハタチ”という人生の節目を迎えることになるが……

　この映画、生真面目さ故に孤独な少女が、少し“大人”になる話。「ＰＯＰ！」と言うタイトルも、決して“弾ける”と言う意味ではなく、“Ｐｒｉｎｃｅｓｓ　Ｏｆ　Ｐａｒｋｉｎｇ”の略だと言うのにもちょっと脱力です。

　映画としては、これは主人公・リンの成長譚であり、ある種の青春映画でもあるのですが、“変な人”ばかりが出て来るいささかシュールな物語となっています。
　価値観の相違や、噛み合わない会話などが面白みを生んでおり、この映画ならではのノリとテンポが独特の世界を作っていますが……これはさすがにやり過ぎに思えました。
　確かに、“変な人”が出て来るのはいいでしょう。でも、この映画、観客の立ち位置でもある“普通”と言う土台が存在しないのです――こうした物語で土台となるべき主人公のリンが、“生真面目”を振り切り、逆方向に“変”になっているからです――みんな“変”では、驚きもおかしさも生まれない、と言う事を理解していないように思えました。　
　

　（２０２２年　２月２６日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

小村昌士

　■出演

柏倉リン　・・・　小野莉奈

爆弾魔　・・・　三河悠冴

（その他のキャスト）
　小林且弥　　野村麻純　　菊田倫行　　木口健太　　成瀬美希　　中川晴樹

　■コピー

本音のままじゃ、
オトナになれません。

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