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　これは、「岬の兄妹」で注目された片山慎三監督の長編2作目にして商業デビュー作。

　大阪の下町で暮らす原田智と中学生の娘・楓。
　ある日、智が「指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら３００万貰えるで」と言い、その翌朝、智は姿を消す。
　残された楓は、父を探し始めるが、警察では相手にもされない。蒼は、智が日雇い労働をしていた現場に行くが、そこでは智の名で、見知らぬ若い男が働いていた――そして、蒼は気づく。その若い男は、８人の女性を殺して指名手配されている連続バラバラ殺人犯・山内照巳である事に……

　この映画、なかなか面白い構成になっています。前半は、突如、行方不明になった父親を探す娘の奮闘――がむしゃらに連続殺人犯を追いかけ、同級生男子におっぱいを見せると言う精一杯の色仕掛けをしてまで協力を得て、父・智の元へと辿り着く――を描いて、映画中盤、そこから時間軸を１３ヶ月巻き戻し、智と、山内照巳の話を描くのです。しかも、これが全く予想もしていなかった内容で、しかも、冒頭の智の楓の暮らす家に、何故母がいないのか、何故智はこんな風になってしまったのかを解き明かすものになっているのです。
　その果てに、綺麗事と偽善を嫌う楓が、探していたものに辿り着く、と言う着地点を迎える物語には完全にやられました――なるほど、片山慎三、確かにただ者ではありません。

　キャストは、芸を封じて演技に徹した佐藤二朗、和製ティモシー・シャラメと言う感じの美青年でありながらも淫楽殺人狂を演じた清水尋也、と、それぞれ見物ではありますが、本作で光るのはやはり伊東蒼。「空白」でも少ない出番ながらも印象的でしたが、本作では正に映画の屋台骨となって奮闘しています――それにしても、「空白」では古田新太、本作では佐藤二朗と、癖の強い父親役と組むのは大変ではないか、と思ったりしますが……

　残念だったのは、映画の後半部分。自殺者を誘い込んで次々に殺した「座間連続殺人事件」をモチーフにした、山内照巳と、その犯行にどうにもリアリティがない事、そして、物語に存在して然るべき、母と娘のエピソードが欠落してしまっている事……この娘がいたからこそ、母が躊躇し、父が葛藤をしたのではないでしょうか？その?末を知らずとも、父に何かを感じるから、娘は父を「さがす」のではないでしょうか？
　物語の謎解きパートである後半の展開から娘不在とした事、それが、作品の中核となる所が抜け落ちてるように感じられました。　
　

　（２０２２年　１月２２日　Ｋｉｎｏシネマみなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

片山慎三

　■出演

原田智　・・・　佐藤二朗

原田楓　・・・　伊東蒼

名無し／山内照巳　・・・　清水尋也

（その他のキャスト）
　森田望智　　石井正太朗　　松岡依都美　　成嶋瞳子　　品川徹

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父は、なぜ消えたのか？

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