ザ・ミスフィッツ

　これは、５代目ジェームズ・ボンドのピアース・ブロスナン主演のアクション大作。
　監督は、「ドリヴン」のレニー・ハーリン。
　
　凄腕怪盗集団・ミスフィッツは、悪人から大金を盗み、庶民に還元することをモットーとする現代の義賊だ。
　そんな彼らが次に狙うのは、中東のテロリストの資金源となっている大量の金塊。砂漠の私営刑務所にある金塊を狙う為、彼らは、一匹狼の盗みのスペシャリストにして脱獄の名人、リチャード・ペイスを勧誘して……

　この映画、ガイ・リッチー風にテンポよく、更に、枝葉を徹底的に削ぎ落とすことで、並の監督ならば二時間を越えそうな盛り込み過ぎの脚本を９０分台に収めている点は、さすが名人、レニー・ハーリンと言う所。
　軽妙な会話劇から、小技のトリック、砂漠を舞台にしたダイナミックなカーチェイスと、趣向を凝らした見せ場も多数、これもまたレニー・ハーリンらしい所でしょう。

　ただ、この種のケイパームービーとなれば、メンバーの特技と個性で、それぞれ見せ場を作るものですが、ペイスと、ホープ、リンゴの特技が何れも”詐欺”と“盗み”でダブってしまうのもいただけないし、７０近い高齢のピアース・ブロスナンの動きも悪い……この辺り、脚本の作り込みと人物設定の掘り下げ不足を感じる所です。
　また、黒人、アラブ人、中国人、韓国人、と人種も性別もバラバラ、時代を反映したかのような多様性のある人物配置の中で、韓国系のジェイミー・チャンが演じるヴァイオレットは、南米出身と言う設定……これは明らかにミスキャストで、ＰＣ的にもラテン系の女優が演じるべき役でしょう。それから、このヴァイオレットに、ピアース・ブロスナン演じるペイスがご執心な様子を見せるのですが、ちょっと年齢的にも釣り合いがとれていない感じ……このヴァイオレットをサルマ・ハエックが演じればピッタリだったように思うのですが。
　あと、市営刑務所所長のシュルツと、ペイスの因縁が省かれてしまっているのも惜しい所です。

　映画としては、シリーズ化も狙っているようですが、正直、この出来だと苦しいのではないでしょうか。　
　

　（２０２２年　１月２１日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

レニー・ハーリン

　■出演

リチャード・ペイス　・・・　ピアース・ブロスナン

（その他のキャスト）
　マイク・アンジェロ　　ハーマイオニー・コーフィールド　　ジェイミー・チャン　　ニック・キャノン　　ラミ・ジェイバー
　ティム・ロス

　■コピー

彼らに盗めないものはない！

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