シルクロード．ｃｏｍ
史上最大の闇サイト

　これは、ネットで麻薬販売を行い、最大１日１００万ドルを売り上げた、史上最大のダークウェブ通販サイト「シルクロード」の誕生から設立者の逮捕までを描くクライム・サスペンス。
　監督は、犯罪ものを得意とするティラー・ラッセル。、

　２０１１年。天才的な頭脳に恵まれたロス・ウルブリヒトは、無能な政府に縛られない自由な世界を作る為、麻薬など違法物を匿名で売買できるダークウェブサイトを立ち上げた。「シルクロード」と名付けたサイトは、やがて大きな取引の場となっていく。
　当然、警察も「シルクロード」を取り締まろうとするが、ロスは絶対に身元がバレない強固なシステムを創り上げ、マフィアや麻薬カルテルでも手が出せないでいるのに、警察の生半可なサイバー捜査の歯が立つ訳がない。
　そんなサイバー捜査班に場違いな男がいた。リック・ボーデン、問題行動を起こし、麻薬捜査課から異動させられた中年男だ――２０も若いボスは、リックに早期退職までの半年間、パソコンで動画でも見てろ、と相手にもしない。
　だが、「シルクロード」の存在を知ったリックは、独学でサイバー捜査を学び、自ら麻薬取引を行って相手の懐に飛び込む、昔ながらの捜査で、「シルクロード」創設者、ロスに迫って行き……

　これは、事実に基づくサスペンス。
　「シルクロード」の誕生から終焉までを、設立者側と警察の双方向から時系列通りに描いて行く物語は、興味深くあれど、盛り上がりに欠ける部分もあるのですが、この映画の構成上の工夫、そしてもっとも魅力的なのは、やはり、ジェイソン・クラーク演じるリック・ボーデンと言う人物。
　事件に係わった２人の捜査官のエピソードを合わせてひとりにした、と言う事ですが、このキャラクターと背景がいいのです――時代遅れの現場主義、ＰＣ操作さえおぼつかなかった中年男が、サイバー捜査班で窓際族としての扱いを受けながらも、それでも腐らず、懸命にＰＣを操って、天才と対峙するのです――これは、リック同様、組織の中で、時代遅れになりかけている中年男にこそ響くものがあります。
　しかも、そこまで頑張る理由と言うのが、学習障害がある娘を、専門教育が受けられる学校に入れてやりたい、と言う親心……この娘のためにも、父は警察をクビになる訳にはいかないし、だからこそ、デカいホシを挙げてやろうと奮闘するのです……こりゃもう、男泣きを誘う展開です。

　知識と経験に、最新のスキルが加われば、時代遅れのおっさんだって若い連中に一泡吹かせてやれるんだ、と言う展開は痛快ですし、娘のために一線を越えてしまった男が、それでも踏み止まったのは父親としての責任、と言うのにも胸が熱くなります。
　何だか、中年男限定の映画のような気もしますが、これはいい映画だと思います。　　
　

　（２０２２年　１月２１日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ティラー・ラッセル

　■出演

リック・ボーデン　・・・　ジェイソン・クラーク

ロス・ウルブリヒト　・・・　ニック・ロビンソン

（その他のキャスト）
　ケイティ・アセルトン　　ジミ・シンプソン　　ダニエル・デヴィッド・スチュアート　　ダレル・ブリット＝ギブソン　　レクシー・レーブ
　ウィル・ロップ　　ポール・ウォルター・ハウザー　　アレクサンドラ・シップ

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