ＨＯＵＳＥ　ＯＦ
ＧＵＣＣＩ
ハウス・オブ・グッチ

　これは、サラ・ゲイ・フォーデンの実録小説「ハウス・オブ・グッチ」を原作に、イタリアのファッションブランド・グッチの創業家一族の確執とその中で起きた殺人事件を映画化したもの。
　監督はリドリー・スコット。主演はレディ・ガガ。共演は、アダム・ドライバー、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズと言う豪華キャストになっています。

　パトリツィア・レッジャーニは、地元運送会社の社長の娘……とは言え、零細企業で暮らしは苦しく、パトリツィアには学もなければ教養もない。でも、強烈な上昇意欲を持つパトリツィアは、あるパーティでグッチ家の御曹司マウリツィオと出会うと猛烈なアタックを開始。その美貌と肉体で、マウリツィオを虜にして、やがて結婚……この結婚は、グッチ家として歓迎すべき事ではなかったが、それでも子供が生まれるに至って、漸く一族に迎え入れられる事になる。
　グッチ家の嫁として華やかなファッション業界を謳歌するパトリツィアは、徐々にグッチ家での地位を高めていくが……

　これは面白い――とは言え、この話、グッチ家に嫁いだ妻が、覇気のない夫を炊きつけて、叔父を利用して権力中枢に座ると。その叔父を始め、親族を追放して実権を握り、女王のように振舞うようになる。しかし、夫に愛想尽かされて、夫は愛人と連携して今度は妻を追放、そこで妻は頼りにしていた占い師の紹介で殺し屋を雇って夫を殺してしまう、と言う中世の王室を舞台にした権力闘争を、２０世紀にもなってやっていた、と言うのが驚きではあります。
　そして、アメリカ映画によくあるように、本作も登場人物全員実名なのですが、まだ四半世紀ほど前の事を映画にしてしまう、と言う大胆さには感心します。

　本作の事実上の主人公であるパトリツィアを演じたレディ・ガガは、こりゃもう凄い役作りと演技。増量に恐らくは特殊メイクも施して、マウリツィオ曰く「エリザベス・テーラーのよう」と言われたパトリツィアになり切っています。
　また、グッチのモデルさえ務めたジャレット・レトが、禿げて冴えない中年男を演じている事、ギラギラと目を光らせて老いた権力者を,その座から追い落としていたアル・パチーノが、追い落とされる役を演じているのにも注目です。

　あと、この映画、フィアットに始まり、アルファ・ロメオにポルシェにランボルギーニ……と、’７０年代から’９０年代にかけての様々なクルマ、特にスーパーカーが登場するのも見所と言えるでしょう。

　それにしても、独特の美意識を持つレディ・ガガが、パトリツィアと言う教養もなければセンスも悪い女性を演じる気になったものと思いますが、そこは、古臭い物語とは言え、女性が愛ではなく権力を求めて行く姿に、現代的な要素を感じたからかも知れません。
　最後、夫殺しで告発されながらも、自身を「パトリツィア・グッチ」だと名乗るパトリツィア……そこに、ブランドと言うものの魔力を感じます。


ＰＳ
　このグッチ家の権力闘争を裏で操り、パトリツィアを通してグッチを我が物にしようとした占い師・ピーナをサルマ・ハエックが演じているのですが、彼女の夫は資産家で、現在、グッチのオーナーのひとり。だから、パートナーでもあるサルマ・ハエックもグッチの所有権を持ってる……複雑と言うか、皮肉と言うか……　
　

　（２０２２年　１月１９日　Ｔ−ＪＯＹ横浜にて）

（作品データ）

　■監督

リドリー・スコット

　■出演

パトリツィア・レッジャーニ　・・・　レディー・ガガ

マウリツィオ・グッチ　・・・　アダム・ドライバー

アルド・グッチ　・・・　アル・パチーノ

パオロ・グッチ　・・・　ジャレッド・レト

（その他のキャスト）
　ジェレミー・アイアンズ　　サルマ・ハエック　　カミーユ・コッタン　　ジャック・ヒューストン　　マダリーナ・ゲネア
　リーヴ・カーニー　　ユーセフ・カーコア

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