クライ・マッチョ

　これは、クリント・イーストウッド監督デビュー５０周年記念作品。
　本作では、クリント・イーストウッド自身が老齢のかつてのロデオスターを演じています。

　元ロデオ界のスターだったマイクは、妻に先立たれ、テキサスの荒野で孤独な日々を過ごしていた。ある日、恩義のある元雇い主に「メキシコにいる別れた妻から息子ラフォを取り戻してほしい」と頼まれる。犯罪スレスレ、誘拐同然の仕事だが、それでも、元雇い主に恩義があるマイクはこれを引き受け、メキシコへ向かう。
　裕福な母の元を飛び出し、ストリートで、荒れた生活を送るラフォを見つけたマイクは、共に米国を目指すが……

　この映画、先日観たリーアム・ニーソンの「マークスマン」とよく似た印象の映画――もっとも、こちらの方は、追っ手はチンピラひとり、大したアクションもサスペンスも起きる訳ではありません。こちらの方は、少年を連れての旅の最中で、美貌の未亡人に気に入られて、そこを終の住処にする事を決める、と言う緩い物語となっています。９１歳になっても、まだまだ映画で色恋沙汰を演じる、もしくは演じたいのが、クリント・イーストウッドのらしさのひとつでしょう……ラフォの母親にもベッドに誘われますし。
　その一方で、荒馬を手懐けるシーンでは、乗馬シーンがスタントとなっており、クリント・イーストウッドが、最早、思うように馬に乗れなくなっている事は、もの悲しく感じました。

　クリント・イーストウッド映画としても新味はなく（「運び屋」に「グラン・トリノ」の要素を合わせ持ったようなもの？）、映画としてはかなり粗い作りで、訴えかけて来るものも希薄です。
　作品に込められた、国境を越えたその先に楽園（＝天国）がある、と言う作品テーマ――そうすると、故郷・テキサスが現世で、ラフォが父親に引き渡された国境が煉獄となる訳か――そんな構図をストレートに出して来るのを、老境の諦念と見るか、既に涅槃の域に踏み込んだ達観と見るか……　
　

　（２０２２年　１月１４日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■製作・監督

クリント・イーストウッド

　■出演

マイク　・・・　クリント・イーストウッド
　
ラフォ　・・・　エドゥアルド・ミネット

（その他のキャスト）
　ドワイト・ヨーカム　　ナタリア・トラヴェン　　フェルナンダ・ウレホラ

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