レイジング・ファイア
ＲＡＧＩＮＧ　ＦＩＲＥ

　これは、「香港国際警察」のベニー・チャン監督の遺作となったアクション。
　出演は、「イップ・マン」シリーズのドニー・イェン、「香港国際警察」にも出演していたニコラス・ツェー。

　正義感溢れる香港警察のチョン警部が、何年も追い続けていた犯罪組織の首領のウォン。ついに、ウォンの薬物取引に踏み込む日がやって来る。ところが直前になって、チョンのチームは作戦から外されてしまう。
　そして、その作戦の最中、警察の動きを熟知した何者かが、ウォンの一味、そして警官隊を殺戮、薬物を奪っていった――やがて、捜査線上に、チョン警部の後輩で、彼を慕っていたンゴウと彼の元部下たちが浮かび上がる。
　4年前、ンゴウは捜査の行き過ぎで被疑者を殺してしまい、過失致死で有罪となっていた。その刑期を終え、釈放されたンゴウは、警察と、そしてチョン警部への復讐心を滾らせていたのだ――

　この映画、ドニー・イェン演じる警部と彼に恨みを持つ元刑事の対決と言う、敵味方のはっきりした構成で、ドニー・イェンの武闘アクションを見せる、と言う内容は、正に香港アクションとして定番の作り。そこは名監督ベニー・チャンならでは、と言う所でしょう。
　全盛期からはスピードは落ちたとは言え、相変わらず“魅せる”ドニー・イェンに、ケレン味を以て対峙するニコラス・ツェーのアクションは、見応え充分。香港映画ならではの、室内や入り組み雑然とした建造物内を移動しながら闘う、と言う香港映画ならではの武闘アクションに加え、香港の目抜き通り「廣東道」での、通行人を盛大に巻き込みながらの凄まじいカーアクション＆銃撃戦を描くなど、新しい取り組みも見物です。

　気になったのは、「勤続３０年」でありながら、家には「第一子誕生を控えた妻が待つ」と言う、ドニー・イェン演じるチョン警部の年齢設定……ハリウッドもそうなのですが、香港アクションスターの高齢化も問題です。

　映画としては、敵味方こそはっきり分けているものの、どちらが善とも悪とも単純には割り切れない、と言う所に踏み込んでいるのが現在の香港映画らしい所でしょうか。
　警察と言う国家権力を背負った組織の中で、ひとりの人間が、どれだけ己を貫けるものか――国の正義、組織の都合……そんな“状況”において、立場が逆だったらどうなるのか……そんな事を考えさせられてしまいます。
　それは、現在の香港映画の立ち位置を同時に考えさせられました。　
　

　（２０２１年　１２月２６日　ＴＯＨＯシネマズ日比谷にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ベニー・チャン

　■出演

　チョン警部　・・・　ドニー・イェン
　
　ンゴウ　・・・　ニコラス・ツェー

（その他のキャスト）
　チン・ラン　　パトリック・タム　　ケニー・ウォン　　サイモン・ヤム

　■コピー

復讐の怒りに燃える狂獣　　正義の怒りに燃える警察

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