ただ悪より
救いたまえ

　これは、「新しき世界」のファン・ジョンミンとイ・ジョンジェが７年ぶりに共演した韓国のバイオレンス・アクション。
　監督は、「チェイサー」などの脚本を手がけたホン・ウォンチャン。日本のヤクザ役として、豊原功補や白竜が出演しています。

　韓国の情報局員だったインナムは、政変により追われる立場となり、東京で殺し屋稼業をしていた。
　最後の仕事として、大物ヤクザを暗殺し、パナマへ高飛びしようとしたインナムに連絡が入る。
　かつて愛した女性がバンコクで殺され、インナムとの間に生まれた娘が誘拐されて行方不明だと知らされたインナムはバンコクに飛び、関わった者を次々と拷問にかけて娘の居所を突き止める。
　一方、インナムの最後の仕事だった大物ヤクザの弟で、殺し屋のレイは、兄の復讐を誓い、死体の山を築きながらインナムに迫っていた。
　そして、バンコクで遂に２人の男は出会い、壮絶な死闘の幕が上がる……

　この映画だが、要は殺し屋同士の対決。捕らえた相手の腹を裂くのが趣味のレイも性が悪いのだけど、拷問相手の指や耳をニッパーで切り落としていくインナムも大概だ。
　その犯行だけでなく、ド派手なファッションもいささかやりすぎ感のあるレイを演じたイ・ジョンジェと、インナムを演じるのは、こんなアクション映画なのに相変わらず身体も鍛えずに自然体で臨むファン・ジョンミンと言う対比の構図もいいし、東京やバンコクと言った、韓国にとっての異国の地を舞台に、そこならではの要素を魅力的に捉えるロケーションと撮影、テンポよくハードボイルドに進める展開もなかなか。
　韓流クライムサスペンスで目立つ、人体破壊の残酷描写も、構図とカメラワークでエグさを見せず、痛みを伝える、スタイリッシュな描写を見せるし、暴力描写だけではなく、工夫を凝らしたカーアクションも特筆すべき出来で、活劇として、よく出来ています。

　惜しいのは、結末がいささか弱い事で、画竜点睛と行かなかった事でしょうか……それでも、エグさの目立つ韓流バイオレンス映画に、スタイリッシュさを持ち込んだホン・ウォンチャン監督の今後に期待です。　
　

　（２０２１年　１２月２５日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ホン・ウォンチャン

　■出演

　インナム　・・・　ファン・ジョンミン

　レイ　・・・　イ・ジョンジェ

（その他のキャスト）
　パク・ジョンミン　　豊原功補　　白竜

　■コピー

殺し合う理由。
そんなものは忘れた――

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