これは、仕事や家族のために七転八倒する中年男性の日常を切り取ったつぶやきシローの同名著書を安田顕主演で映画化したもの。
　監督は「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」の李闘士男。

　伊澤春男、４５歳。勤続２５年のスーパーウメヤの主任として現場を仕切る立場だ。店長の「春男はこの店の司令塔」という言葉は嬉しいが、そろそろ店長の肩書きも欲しくなってきた。
　店長への昇進、店内のトラブル、娘の彼氏の存在……妄想と現実の狭間で喜んだり落ち込んだりの繰り返しの日々で、春男の脳内は今日も戦場と化している……

　この映画、「何をやっても上手く行かない男の悪戦苦闘ぶりを描く人情喜劇」と言う事なのですが――４５歳、大手スーパーの現場主任、美人の嫁と娘２人、庭付き一戸建て持ち……どう見ても、サラリーマンとしては人並み以上で、どの辺が「上手く行ってない」のか判らず、白けてしまいます……原作のつぶやきシローの視点ではそうなのかも知れません。確かに、華やかな芸能人に比べたら慎ましい暮らしに思えるのかも知れませんが、庶民としちゃ十分勝ち組の暮らしではないか、と思ってしまうのです。

　確かに、常にカッコをつけたがり、マウントをとりたがる春男が空回りしてズッコケる、と言うのは、これは誰しも経験がある事でしょう……そんな、身につまされるシーンもあるにはあるのですが、心中をモノローグで語る演出や、軽妙なコメディの癖に物語のテンポが悪く、どうにも笑えませんでした――そう言えば、つぶやきシローって、自分的には全然ウケなかったな、と、そこで気づきました。自分とは相性がよくなかったのかも知れません。　
　

　（２０２１年　１２月２４日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

李闘士男

　■出演

　伊澤春男　・・・　安田顕
　伊澤律子　・・・　小池栄子
　伊澤小梅　・・・　岡田結実

（その他のキャスト）
　ファーストサマーウイカ　　SWAY（劇団 EXILE）　　金子大地　　菊池日菜子
　小山春朋　　田村健太郎　　佐藤真弓　　鯉沼トキ　　竹井亮介
　久ヶ沢徹　　伊藤ふみお（KEMURI）　　伊集院光　　白川 和子

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