プリズナーズ・オブ・ゴーストランド

　これは、園子温監督のハリウッドデビュー作。
　主演は、ニコラス・ケイジ。ヒロインは「ＣＬＩＭＡＸ　クライマックス」のソフィア・ブテラ。

　男は、銀行強盗をしくじり囚われた――それから歳月が過ぎ、ある日、街を牛耳る知事<ガバナー>から、彼の元から逃亡した女を連れ戻すよう命じられる。爆弾を仕掛けられた特殊なボディスーツに身を包んだ男は女を探して街を出るが、荒れ果てた地で“ゴースト”と出会ってクルマは大破してしまう。
　怪我した男は、荒野の中の奇妙な世界“ゴーストランド”に運び込まれるが……

　これまでも幾度かハリウッド進出の話があった園子温監督ですが、これまでは、そのいずれも頓挫しており、今回の企画もクランクインを前に園子温監督が心筋梗塞で倒れ、またしてもダメになるのでは、と危惧されたそうです。
　結果として、園子温監督の体調を考慮して、撮影は日本で行われ、その内容を大きく変える事となりました――元々、ニューメキシコの砂漠で、「マッドマックス　怒りのデスロード」のような映画を撮るはずだったのに、撮影は京都と彦根になり、多くのキャストの日本人俳優が務める事になったのです。
　結果、映画世界は和洋折衷の奇妙奇天烈なものとなりました――遊郭のセットは別の映画のものを転用、ゴーストランドは廃工場を利用したオープンセット、とハリウッド映画らしからぬチープで空間の広がりを感じさせない作品世界には、園子温の作品に懸けるエネルギーの低下を感じましたし、物語の方も、意外なくらい「マッドマックス　怒りのデスロード」そのまま。園子温監督が意図した砂漠を改造車が爆走するシーンに代え、日本のど田舎を大量のママチャリが爆走すると言うビジュアルも、ニコラス・ケイジひとりがママチャリに乗るだけ、となり、園子温監督のやりたい事が出来てないのでは？と思いました……その力がなくなっているとは思いたくないのですが……

　それでも、ニコラス・ケイジが主演を張り、ヒロインのソフィア・ブテラも凜々しく美しく、坂口拓が本場のチャンバラを見せる、など見せ場もありますし、園子温監督が繰り返し描く、核の悪夢も取り入れられてはいるのですが……画面から訴えかけて来るもののない力のない映画には、正直、物足りなさを感じてしまいました。
　

　（２０２１年　１０月１３日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

園子温

　■出演

ヒーロー　・・・　ニコラス・ケイジ

（その他のキャスト）
　ソフィア・ブテラ　　ニック・カサヴェテス　　ビル・モズリー　　坂口拓　　中屋柚香　　YOUNG DAIS
　古藤ロレナ　　縄田カノン

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