キャッシュトラック

　これは、ジェイソン・ステイサムが「リボルバー」以来１６年ぶりにガイ・リッチー監督とタッグを組んだクライム・アクション。
　共演は「アウトポスト」のスコット・イーストウッド、「ハドソン川の奇跡」のホルト・マッキャラニー。

　ロスの現金輸送専門の警備会社フォルティコ社に、ある日、イギリスの警備会社で働いていたと言う中途採用の新人、パトリック・ヒル……通称“Ｈ”が雇われる。採用試験をぎりぎりで合格したＨだが、彼の乗った現金輸送車が強盗に襲われた時、Ｈは反撃に出て強盗犯を全員射殺してしまう。更に、後日、再びＨの乗る輸送車が強盗に襲われた際には、Ｈの顔を見た強盗犯が、なぜか金も奪わずに逃げてしまうのだった。
　そんな彼の正体に疑問を持ち、疑心暗鬼に陥ってゆく周囲のスタッフたち。実は、Ｈがフォルティコ社で働くのには理由があって……

　この映画、「Ｈの正体は何者か？」と予告編でも煽っているのですが、勿論、ジェイソン・ステイサムがただの中途採用社員である訳もなく、その正体は映画中盤で丁寧に説明されてしまいます。
　その後、同じ事件を何度も語り直す中で次第に真相に近づいていく構成も、語り口を変える「羅生門」スタイルではなく、少しずつネタを小出しにして真相に近づくと言うもので、もどかしくもクドい、と言う印象――これだったら、時間軸を前後させず、概ね時系列順に見せてくれた方がすっきりするのでは、と思ってしまいました。
　そんな訳で、ミステリーとしては中盤以降はテンションを失い、章立てにしている構成も有効とは思えず、最後のドンデン返しに通じる伏線がはっきりしないなど、物語の方はどうにもスッキリしませんし、、全篇シリアスなタッチで、ロマンスは勿論、ちょっとした遊びのシーンもないのは、ちょっと寂しい感じもしました。フォルティコ社の同僚警備員はほぼ皆殺しになってしまう展開も陰惨です。
　ガイ・リッチーお得意の軽妙なノリのクライム・アクションとはちょっと毛色が違うなぁ、と思っていたら、これは、フランス映画「ブルー・レクイエム」のリメイクとのこと……なるほど、とは思いましたが、せっかくのリメイクなのですから、やはり“らしさ”は見せて欲しかったなぁ、と言うのが正直な所です。　
　

　（２０２１年　１０月１０日　Ｔ−ＪＯＹ横浜にて）

（作品データ）

　■監督

ガイ・リッチー

　■出演

“Ｈ”／パトリック・ヒル　・・・　ジェイソン・ステイサム

（その他のキャスト）
　スコット・イーストウッド　　ホルト・マッキャラニー 　　ジェフリー・ドノヴァン　　ジョシュ・ハートネット

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英雄か
悪党か

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