これは、２０１９年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で、短編コンペティション部門グランプリを受賞した「ぱん。」の阪元裕吾監督による青春アクション映画。
　出演は、「るろうに剣心」などで活躍するスタントパフォーマーの伊澤彩織と、舞台版「鬼滅の刃」で禰豆子を演じた��石あかり。

　高校三年生のちさととまひろは、実は、とある組織に属する凄腕の殺し屋コンビだ。
　高校を卒業すると、組織の規定で、寮を出て自活しなければならない。
　調子のいいちさとは早速メイド喫茶の仕事を見つけるが、コミュ障気味のまひろに接客業は難しく、結局、ちさとの部屋でなし崩し的にルームシェア生活を続けながらバイト面接を続ける日々。殺し屋稼業で稼いでるのに、何でバイトなんて……と、まひろはふて腐れ、バイトに馴染み始めたちさとは、そんなまひろに厳しく当たって、ふたりは仲違いしてしまう。
　そんな中、ちさとが、成り行きでヤクザと戦う羽目になった。互いに因縁のある者同士、今さら後には引けない。数十人の武装したヤクザ相手にひとりでは分が悪く、ちさとはまひろと仲直りして……

　この映画、冒頭から伊澤彩織演じるまひろのキッレキレのアクションを見せて一気に観客を引き込みます。女子高生殺し屋、と言う物騒かつアリエナイ設定なので、そこを説明したって仕方ない。見せるのはアクション、それにメリハリをつける、まひろとちさとの緩い日常なのです。
　そして、この映画、意外にも、この日常描写がイイ。伊澤彩織は女優として、映画で台詞喋るのは初めて、と言う事なのだけど、そこを逆手に取って、コミュ障気味と言う設定を与えて、感情のこもらない台詞の違和感をなくし、アイドル上がりの舞台女優・��石あかりのオーバーアクト気味のハイテンション演技と対照させる、このキャスティングの妙と言ったらありません。そんなふたりの女の子が、ソファーの上でぐてっとし、「あ゛〜だりー」とかやっているのがくすぐったくもおかしい。１９９６年生まれで、正に若者世代の阪元裕吾監督、こうした部分には肌感覚のリアルさです。
　その一方、アクションの方は超本格です。伊澤彩織はスタント・パフォーマーとして一流。敵役もスタントパフォーマーとし、俳優に入れ替える事を不要とした故に出来た、引きからアップまでシームレスなアクションで、格闘の展開を一連のものとして見せるのです。これには、格闘アクションに対し目が肥えている人をも唸らせるものでしょう。喧嘩格闘なら、頭突きから噛みつきまで何でもあり、と言うのもリアルですし、クライマックスの戦い、床に落ちた拳銃を奪い合うシーンで、届かない、と見るやカウンターで頭突きを放つまひろ、と言う展開には痺れました。
　そんな本格アクションに、ゆるゆるの日常……この絶妙のブレンドがいい、面白い映画です。
　惜しいのは、敵役となるヤクザの方も妙に緩い事。むしろ、ここはリアルな怖さを出した方が、まひろ＆ちさとと好対照になったように思うのですが……

　まひろ＆ちさとのコンビは魅力的ですし、ロマンスや、強大なライバル登場など、話はまだまだ続けられそうなので、これは続編を期待したい所。
　阪元裕吾監督の今後に注目です。　
　

　（２０２１年　９月２７日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

阪元裕吾

　■出演

ちさと　・・・　高石あかり
まひろ　・・・　伊澤彩織

（その他のキャスト）
　三元雅芸　　秋谷百音　　うえきやサトシ　　福島雪菜　　本宮泰風

　■コピー

二人は殺し屋
　　その正体は……

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