これは、２００１年のアルゼンチン金融危機を背景にした、庶民たちによる痛快リベンジ。
　主演は「人生スイッチ」のリカルド・ダリン。

　２００１年、アルゼンチン。寂れた小さな田舎町で元サッカー選手のフェルミンら住民たちは、長らく放置されていた穀物倉庫を復活させ、農協を設立して地元農業の発展と雇用を生み出そうと画策する。
　倉庫の買収に向け、貯金を出し合って資金を集めたフェルミンだが、現金を銀行に預けた翌日、金融危機で預金は凍結。しかも、この状況を悪用した銀行と弁護士に金を騙し取られてしまう。
　無一文となり、絶望するフェルミンは、更に事故を起こして妻を亡くしてしまう――だが町の人々は、やられっ放しではいられない気概を持っていた。彼らは密かに調査を進めて悪徳弁護士の隠し金庫のありかを突き止めると、資金の奪還計画をフェルミンに持ちかけるのだが……

　この映画、アルゼンチン版「三匹のおっさん」と言う感じで、フェルミン・アントニオ・ロロのおっさん３人が物語を引っ張ります。いかにもなラテン系のおっさんのフェルミンを演じたアルゼンチンの名優、リカルド・ダリンの渋い演技は見物ですし、そのリカルド・ダリンの息子のチノ・ダリンが、ほぼ唯一の若手として劇中でも息子役で登場し、親子共演を見せると共に、不器用なロマンズも担当しています。
　しかし、映画のテンポは緩慢、物語のアイデアは、映画「おしゃれ泥棒」からの借用ですが、そんなスマートなものではありません。ギャグの切れ味も悪く、笑える部分もないのが辛い……まぁ、これは日本人には判らないネタであるせいかも知れませんが。

　もっとも、この映画が公開されたのは２０１９年……またしても経済危機に見舞われたアルゼンチンにおいて、庶民が上級国民に一杯食わせる、と言う内容が痛快、と受け止められてヒットとなったのかも知れません。 　
　

　（２０２１年　８月２１日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

セバスティアン・ボレンステイン

　■出演

　フェルミン　・・・　リカルド・ダリン
　アントニオ　・・・　ルイス・ブランドーニ
　ロロ　・・・　ダニエル・アラオス

（その他のキャスト）
　チノ・ダリン　　ベロニカ・ジナス　　カルロス・ベロッソ　　リタ・コルテセ　　アンドレス・パラ

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