ＤＡＨＵＦＡ
守護者と謎の豆人間

　これは、過激な暴力描写で中国史上初の年齢制限付公開となったファンタジーアニメ――もっとも、中国では映画に対するレイティング制度がない上に、アニメは「子供向け」と認識されているので、制限は製作者による自主規制だと言う事のようですが……

　奕衛国の王宮から失踪した皇太子を捜すため、王家の守護者であるダフファーは国境を越え、不気味な気配が漂う、奇妙な村に辿り着いた。
　この村の住民は、人ではなかった。喋らず、見た目も皆そっくりで、感情も自由意志もないようだった。
　そんな村で、皇太子を見つけ出したダフファーは、この村に隠された秘密へと徐々に近づいていく……

　このアニメ、絵柄としてはよくあるマンガタッチ。シンプルな描線でありながら、細かく描写されたディティールなど、スタジオジブリ作品を彷彿とさせるもの――内容、そして描写からしても、これは「もののけ姫」でしょうか……そんな絵でありながら、奇妙な“村”に住まう人ならざる住人を腕や頭を撃ち飛ばし、切り刻む描写が続きます……確かに、これは子供に見せるものではないでしょう。

　物語内容としても、“村”の設定や、住人を支配する権力者の構図は風刺ＳＦとして見事なものではないかと思います。
　それにしても、住民を、特産品であり武器でもある“黒い石”の生産の為に恐怖で支配している、とか、その支配の方策として、住民の言葉を奪い、住民による相互監視と密告、そして暴力で押さえつけて行く……と言うのは、メタファーとしても露骨ではないでしょうか？
　前述したように、「アニメは子供の観るもの」だとして検閲が緩かったのかも知れませんが、それにしても、よくもまぁ、この内容の映画を中国で公開出来たものだと思います。

　映画としては、この“村”の世界構築にエネルギーを使い果たした感があって、起承転結が上手くまとまっているとは言えないし、カットの繋ぎの粗さも感じます。結末も、いささか中途半端なものであるとも言ます。
　だけど、その内容は、さまざまなメタファーに富み、これを生み出した想いを含め、様々な事を考えさせられる映画となっているのではないでしょうか？
　

　（２０２１年　７月２５日　池袋ＨＵＭＡＸシネマにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

不思凡

　■出演

ダフファー　・・・　シャオ・リェンシャ

（その他のキャスト）
　トゥウトハモン　　チン・シーチェ　　ユウ・ユエシャン

　■コピー

そこはニセモノの目と口をつけ
人間を夢見る亡霊たちの村――

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