１００日間生きたワニ

　これは、きくちゆうきがＳＮＳで公開して大人気となった４コママンガ「１００日後に死ぬワニ」を原作に「カメラを止めるな！」の上田慎一郎とアニメーション監督としても活躍するふくだみゆき夫妻がアニメ化したもの。
　声の出演は神木隆之介、中村倫也。

　３月、皆で楽しみにしていたお花見の場に、ワニは遂に姿を見せる事はなかった――その１００日前。ワニは、バイクの事故で入院したネズミを見舞いに訪れていた。バイト先のセンパイへの片想い、プロのゲーマーになろうと大会へ出場――ワニの毎日の暮らしは平凡だが穏やかなものだったが……

　原作のウェブマンガは未見、完結後の騒動も遠回りに見ていただけなので、本作の初見となった映画中心に感想をまとめます。

　映画は、原作の絵柄そのままアニメ化しており、かつてのマンガ映画の趣。巷では「手抜き」とか「作画崩壊」と酷評されていますが、原作マンガの絵を、ここまで動かして見せるのは非凡、と思っていたら、コンテとアニメディレクターは、「イデオン」や「ザブングル」の湖川友謙ではないですか！なるほど。

　原作は、１日１話ずつ公開し、「あと××日で死ぬ」と言うカウンドダウン方式でしたが、映画は、冒頭で“死”を描き、そこから１００日前に遡る構成……これにより、人生最後の１００日を如何に「生きた」のかを描いています。
　しかし、この映画、正直退屈でした。エピソード自体はともかく、どうにもテンポがよくない――原作のエピソードは１００日分ある筈なので、もっとテンポよく見せてくれてもよさそうなものなのですが――あまりに退屈し、途中、時間をチェックしてぎょっとしました。映画が始まってまだ３０分、それなのに、ワニの最後の１００日をほぼ描いてしまっているのです。
　そこから、映画はオリジナルの展開に入り、ネズミなどワニの友人らが、花見の日のワニの死から１００日後、「死」と「喪失」を乗り越えて行くのを描いて行きます。
　上田慎一郎監督は、代表作「カメラを止めるな！」でも、ひとつの物語を視点を変えて描き直すと言う構成を取っており、これも、その変形と言えるかもしれません。ある意味、上田監督らしい構成だと感心しました。
　そして、この後半にはもう一工夫があり、これが心動かす作りになっている――これは正直大したもので、退屈だった前半の印象をかなり変え、ポイントを取り返した感じです。

　この内容を、この構成で見せるのであれば、これは上田監督の初期構想にあったと言う実写映画にしてしまった方がよかったかも知れません。
　そうすれば、ここまで非難（それも観てもいない人に！）される事もなかったのではないでしょうか？　
　

　（２０２１年　７月１２日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

上田慎一郎　　ふくだみゆき

　■出演

　ワニ　・・・　神木隆之介

　ネズミ　・・・　中村倫也

　センパイ　・・・　新木優子

（その他のキャスト）
　木村昴　　山田裕貴　　ファーストサマーウイカ　　清水くるみ　　Kaito　　池谷のぶえ　　杉田智和

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