これは、中国で大ヒット中のアクションシリーズ「僕はチャイナタウンの名探偵」の第３弾――ただし、日本での劇場公開は本作が初となりますが、日本公開版は、それまでの物語の解説付きとなるので問題ないでしょう。
　出演は、「新喜劇王」のワン・バオチャン、「空海　KU−KAI　美しき王妃の謎」のリウ・ハオラン。共演がハリウッドでも活躍するタイのアクション・スターのトニー・ジャー。日本側キャストも妻夫木聡、長澤まさみ、三浦友和となかなかの豪華キャスト。監督・脚本は、シリーズ全作を手掛けるチェン・スーチェン。

　様々な難事件を解決し、世界探偵ランキング「ＣＲＩＭＡＳＴＥＲ」でも上位の探偵コンビ、タン・レンとチン・フォンは、ＮＹでの事件解決の後、日本の探偵・野田昊から協力を依頼され、東京に向かう。
　今回のミッションは、密室殺人事件の犯人として起訴されたヤクザの組長・渡辺勝の無罪を証明するというもの。タイの探偵ジャック・ジャーも加わり、4人で事件解決に動き出すが、事件解決率１００％を誇るエリート警視正・田中直己が割り込んで来て事態は複雑になって行く。
　その最中、事件の被害者でもあるチャイニーズマフィアのボスの秘書で、事件の鍵を握る小林杏奈が何者かに誘拐され……

　一昔前の海外映画に登場する日本と日本人と言えば、中国とごっちゃになった怪しい日本語を喋るのが定番でしたが、今や、世界的な映画製作拠点となった中国映画はそんな事はしません。
　準主役の野田を演じる妻夫木聡を始め、日本映画としても豪華キャストと言える布陣で、ちゃんと日本でロケをし、その製作費の半額に相当する額が日本での撮影に費やされています。
　見せ場のひとつとなる渋谷駅前のスクランブル交差点のシーンは道路占有許可が下りず、実物大の交差点をオープンセットで組んでの撮影したなど、日本映画とはスケールの違う所を見せつけます――尚、このセットは昨年の映画」「サイレント・トーキョー」でも使用されました。

　映画は、冒頭からワン・バオチャンが中国映画ならではの騒々しいドタバタ劇を見せます。追われて逃げるの追走劇に、トニー・ジャーのアクション、物語を軸となるのは意外にも古典的な密室殺人ミステリー。それに中国残留孤児を絡めた、親子三代の因縁物語……と言う盛り沢山の物語を、呆れる程の物量と潤沢な制作費を使い力技で仕上げています。さすがに、あざとい部分も感じますが、そこも含めての中国映画なのです。娯楽映画と割り切って、細かな事を気にしなければ、これは楽しい映画です。
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　物語は、「ＣＲＩＭＡＳＴＥＲ」で万年１位の謎の名探偵「Ｑ」の存在が見えた所で、これからがクライマックスと言う所。
　次作も期待したいが、日本ではなく、恐らくロンドンが舞台となる次作の日本公開は期待出来ないかな……　


ＰＳ
　この映画は２０１９年夏には撮影を終えています――映画の最後を飾る花火大会、誰もマスクをつけていない、多くの訪日外国人で溢れた東京……既に失われてしまったその光景は、随分と昔のように感じます。　
　

　（２０２１年　７月１０日　ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

チェン・スーチェン

　■出演

タン・レン　　・・・　ワン・バオチャン
チン・フォン　・・・　リウ・ハオラン

野田昊　・・・　妻夫木聡

渡辺勝　・・・　三浦友和
小林杏奈　・・・　長澤まさみ

（その他のキャスト）
　トニー・ジャー 　　染谷将太　　鈴木保奈美　　奥田瑛二　　浅野忠信　　シャン・ユーシエン

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