ブラック・ウィドウ

　これは、「アベンジャーズ」シリーズに登場するロシアの女暗殺者、ブラック・ウィドウを主人公にしたアクションで、「マーベル・シネマティック・ユニバーズ」の第２４作目となります。
　主演は、スカーレット・ヨハンソン。共演は、「ミッドサマー」のフローレンス・ピュー。

　ソコヴィア協定違反で、Ｓ．Ｈ．Ｉ．Ｅ．Ｌ．Ｄから追われる立場となったブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ。
　ブダペストのアジトで、“妹”エレーナと再会したナターシャは、エレーナの話から、かつて彼女らを生み出したスパイ養成施設“レッドルーム”が未だ多くの少女達を拉致して暗殺者として鍛え、洗脳状態に置いていることを知る。
　そんな“レッドルーム”の女性暗殺者集団“ウィドウズ”と、その支配者でありどんな能力でも一瞬にしてコピーする最強の敵タスクマスターが２人に迫り、ナターシャは、かつての“家族”を集め、“レッドルーム”を叩き潰そうとするのだが……

　これは、久々のマーベル・スタジオ作品ですが、公開翌日にディズニープラスでも配信開始、と言うディズニーの映画館への背信行為により、全興連は上映を拒否。ＴＯＨＯシネマズなど大手シネコンにソッポ向かれ、ＩＭＡＸなどの上映もなし……結局、川崎チネチッタで観る事にしました。

　物語は、宣伝コピーにもある、ナターシャがどうして暗殺者となったのか？が中心ではなく、潜入工作時に妹役を務めたエレーナと共に過去の遺恨である“レッドルーム”を潰す方が中心になっています……まぁ、これは仕方ないでしょう。スカーレット・ヨハンソンがナターシャを演じる以上、さすがに少女期の物語には出来ないし、アベンジャーズの世代交代を図る「マーベル・シネマティック・ユニバーズ」としては、フローレンス・ピューにブラック・ウィドウを引き継がせたい、と言う都合もあるのでしょうから。

　映画は、アクションてんこ盛りで、プロローグの飛行機、前半のカーチェイス、そして、ヘリを使ったレッドガーディアンの救出劇、と様々に趣向を凝らし、クライマックスとなるのは、墜落する“レッドルーム”から、自由落下しながらの格闘です。
　マーベル・スタジオ作品らしく、ダイナミックかつ、よく作り込まれたシーンの数々は見応えがあります。
　また、笑いのネタを仕込んであるのもいい――エレーナが、ブラック・ウィドウのキメポーズを執拗にイジり、終盤では自らポーズを決めておいて「寒っ！」とやるセルフパロディは、さすがにウケました。

　一方、物語としては、“レッドルーム”の悪事である少女を道具として利用する、と言う図式が、比喩としても余りにも露骨過ぎ、現実社会を投影した社会派の一面を持ち、大人の観賞に応えていた「マーベル・シネマティック・ユニバーズ」としては、いささかひねりが足りないように感じました。
　そして、意外なくらい「家族」を押し出した内容になっており、そうしたちょっとベタついた部分は、これまでのマーベル作品にはあまり見られなかったもの――この辺りはやはりディズニーの影響でしょうか？

　エンドロール後のおまけシーンでは、バートン――ホークアイの名が出ました。これが、エレーナがアベンジャーズ加入する事のきっかけになるのでしょうか……　　
　

　（２０２１年　７月　９日　川崎チネチッタにて）

（作品データ）

　■監督

ケイト・ショートランド

　■出演

ナターシャ・ロマノフ／ブラック・ウィドウ　・・・　スカーレット・ヨハンソン

エレーナ　・・・　フローレンス・ピュー　

（その他のキャスト）
　レイチェル・ワイズ　　デヴィッド・ハーバー　　Ｏ・Ｔ・ファグベンル

　■コピー

何も信じるな――過去、家族、自分さえも。

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