グリーンランド
−地球最後の２日間−

　これは、地球を直撃する彗星群の中、生き残るためにグリーンランドのシェルターを目指す家族の姿を描くディザスター・ムービー。
　「エンド・オブ・ステイツ」のリック・ローマン・ウォーが再びジェラルド・バトラーとタッグを組んでいます。共演は「デッドプール」のモリーナ・バッカリン。

　地球に接近する大型彗星がバラバラになりながら地球への衝突コースを取る事が判明。最大の破片が衝突し、世界が壊滅的な被害を受けるまで残り４８時間。
　建築技師のジョン・ギャリティは、「大統領アラート」により政府によって選ばれた適格者としてシェルターへの避難を案内され、当初、一家も同行が認められたものの、ひとり息子が糖尿病である事が判明して受け入れを断られてしまう。
　ジョンは、一家は何とか生き残る道を模索するが……

　これは、「ディープ・インパクト」や「アルマゲドン」と同様、天体衝突による地球の危機を描くディザスタームービーなのですが、ありがちな群像劇ではなく、家族のサバイバル・ストーリーにしているのが本作のポイント。
　そして、時間内にグリーンランドにあるシェルターに逃げ込めるか、と言うタイムサスペンスにもなっています。
　
　大災厄から、“選ばれた者”だけが、救いの“箱船”に乗れる、あるいは“携挙”されて救われる、と言う不条理さを受入れられるのは、やはり宗教的なものでしょうか――日本人ならば、選ばれたとしても周囲に流されるままに運命を共にする人が少なくなさそうに思えます。
　もっとも、選ばれる理由が己の意思と関係がないなら、弾かれる理由も同様で、映画は途中で、それをひっくり返すと共に、選ばれなかった者らによる破滅を描いているのだが、むしろ、こちらの方が普遍的な行動原理に基づくもので納得出来るのではないでしょうか。

　物語としては、息子が適格者から弾かれて、家族がばらばらになった所から、どのようにシェルターに辿り着くのか、と言うサスペンスになるのですが、なにしろ一家の主のジョンを、ジェラルド・バトラーが演じているだけに「この人が守ってくれるなら大丈夫」と言う安心感が物凄く、家族がバラバラなうちはサスペンンスがあるものの、家族が揃ったら、もう大丈夫、と言うジェラルド・バトラーの存在感が、この映画としては減点材料かも知れません――また、それまで夫の不倫で仲違いしていた妻が、身に迫る危機にあっさりヨリを戻してしまうのもなんだかなぁ、と。

　気になったのは、「３００ｍの巨大津波」が襲ったパリで、エッフェル塔が半壊しながらも残っているなど、台詞ほどには災厄の規模が小さく思えてしまった事……今や、ＣＧで何でも描けるのですから、もっと徹底的にやって欲しかったと思います。

　そして、ラストシーン、シェルターの扉が開くと、日が差し込み、鳥のさえずりが聞こえる、と言うのは、正にノアの箱船の描写――コロナ禍と言う災厄に見舞われた今だからこそ、災厄を乗り越える映画が求められているのでしょうけれど……これは、思った以上に宗教色の強い映画となっていました。　
　

　（２０２１年　６月　４日　川崎チネチッタにて）

（作品データ）

　■監督

リック・ローマン・ウォー

　■出演

ジョン・ギャリティ　　・・・　ジェラルド・バトラー

アリソン・ギャリティ　・・・　モリーナ・バッカリン

ネイサン・ギャリティ　・・・　ロジャー・デイル・フロイド

（その他のキャスト）
　スコット・グレン　　デビッド・デンマン　　ホープ・デイヴィス　　アンドリュー・バイロン・バチェラー
　メリン・ダンジー　　ホルト・マッカラニー

　■コピー

世界崩壊まで残り４８時間。
そのとき何ができる？

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