水を抱く女

　これは、ベルリン国際映画祭で銀熊賞（最優秀女優賞）と国際映画批評家連盟賞をW受賞したミステリアスなラブストーリー。
　監督は、「東ベルリンから来た女」のクリスティアン・ペッツォルト。

　ベルリンの都市開発庁で、ウンディーネはコンパニオンとして働いている。だが、恋人のヨハネスが別の女性に心移りし、別れ話を切り出されたウンディーネは悲嘆に暮れ、「あなたを殺す事になる」と口走る。
　そんな彼女の前に現れたのは潜水作業員のクリストフ。まるで運命に導かれるように、ふたりは激しく惹かれ合うが……

　ウンディーネとは欧州に伝えられる水の妖精のこと。ウンディーネと人間の男との恋は、「人魚姫」の物語のように悲劇に終わるのですが、異なるのはウンディーネは心移りした男を殺す、と言う定めがある事です。

　この映画は、そのウンディーヌを、最近のヨーロッパ映画界で注目の女優、パウラ・ベアーが演じ、ベルリンを、その語源である「沼地」から、ウンディーネの住処とし、ウンディーネの悲劇を現代のベルリンに描き出そうとしています。この着眼点は面白いし、水中での幻想的な映像も雰囲気がいい――とは言え、ドイツの湖にレッドテールキャットフィッシュはいません。ここは、ヨーロッパオオナマズにして欲しかった所ですが……

　ただ、クリストフとの関係が壊れる辺りの展開がちょっと腑に落ちず、また、結末もなんだかぼやかされたような感じで、ちょっともやもやしました。また、ウンディーネの伝説に馴染がないと判り辛い部分もあり――ウンディーネの伝説は映画鑑賞後に調べました――ちょっと物語に乗り切れなかった所もあり、残念……そのくらいは予習をしておけばよかったな、と。　
　

　（２０２１年　５月１５日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

クリスティアン・ペッツォルト

　■出演

　ウンディーネ　・・・　パウラ・ベーア

　クリストフ　・・・　フランツ・ロゴフスキ

（その他のキャスト）
　マリアム・ザリー　　ヤコブ・マッチェンツ　　アネ・ラテ＝ポレ

　■コピー

愛が終わるとき、
　　哀しき殺意のとき

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