これは、「アズミ・ハルコは行方不明」の松居大悟監督が、自身の実体験をモチーフに書かれた舞台劇を自ら映画化したもの。
　主役の吉尾を成田凌が演じる他、高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹と、個性と実力を備える若手が顔を揃えています。
　
　高校時代、帰宅部でつるんでいた６人の仲間たちもそろそろ３０歳。劇団を主宰する欽一、役者の明石、既婚者となったソース、会社員の大成、地元のネジ工場で働くネジ――そして、優柔不断だけど、変な所が頑固で、憎めない吉尾……同級生の結婚式で、５年ぶりに再会した６人は、新郎新婦のために高校時代に大ウケした赤ふんダンスを踊るが、完全にスベる。
　そして二次会までの３時間。妙に長い時間を持て余しながら、高校時代に思いを馳せる。自分たちは今も友達で、これからもずっと友達でい続けるのだろうと思っていた。そう、たったひとりを除いては……

　この物語、吉尾が５年前に死んだ幽霊だ、と言うのがポイント。
　映画予告編で、それをバラしてしまっており、「さすがにネタバレが過ぎる」と思ったのですが、映画でも割とすぐに明かしてしまうので、伏せる程の事ではないと言う事か……
　吉尾ら６人は、典型的な文化系草食男子で、その閉鎖的とも言える人付き合いの悪さが、幽霊である吉尾を抱え込み、大事にならない、と言うのは面白いし、その閉鎖的な輪の中でのくだらないやりとりは、まぁ、面白いは面白い……ただ、その現実に向き合わない辺りが徐々に苛々してくるのですが。
　だから、高校時代の回想から、時代を追って行き、吉尾との別れと、死を語り出すと一気に映画が湿っぽくなってしまいます。
　映画の建て付けとして、「死」と言うテーマを扱い切れていない感じがあり、それ故に、最後がぐだぐだになってしまう感じがあるのです。

　むしろ、吉尾の初恋の相手である、前田敦子演じるミキエが、男たちを喝破するシーンが痛快です。幽霊相手に「死んでるんじゃねぇよ」と啖呵を切るのには思わず笑ってしまいましたし、死に向き合って、生きる者の言葉として一番説得力があったのがこのシーン。
　ここで終わっていればまだ印象がよかったと思うのですが……　
　

　（２０２１年　５月１４日　Ｋｉｎｏシネマみなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

松居大悟

　■出演

吉尾　・・・　成田凌

欽一　・・・　高良健吾
明石　・・・　若葉竜也
ソース　・・・　浜野謙太
大成　・・・　藤原季節
ネジ　・・・　目次立樹

ミキエ　・・・　前田敦子

（その他のキャスト）
　飯豊まりえ　　内田理央　　小林喜日　　都築拓紀(四千頭身)　　城田優
　滝藤賢一　　近藤芳正　　岩松了

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忘れてやる
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