砕け散るところを見せてあげる

　これは、竹宮ゆゆこの同題小説を中川大志＆石井杏奈の共演で映画化したもの。
　監督は、「うさぎドロップ」のＳＡＢＵ。

　濱田清澄は、ヒーローになる事を目指す、ちょっと痛い高校三年生。そんな清澄は、ある日、一年生の蔵本玻璃がいじめを受けている現場を目撃し、持ち前の正義感から、玻璃を助ける。玻璃は、周囲の人間とのコミュニケーションを拒んでいて、クラスで孤立状態にあったのだ。
　玻璃は最初、清澄にも口を利かなかったが、そんな玻璃に清澄はあれこれ世話を焼いては話しかけ、次第に彼女と心の距離を縮めていくが、そんな彼女には誰にも言えない”家庭の事情”があって……

　原作小説は、青春ラブストーリーとサイコスリラーをミックス、記述トリックを用い、終盤に「あっ」と思わせて最初っから読み返させるような構成になっていると言います――語り手と主人公が実は……と言う、そのトリックは映画では有効に機能していないように思います。
　もっとも、映画は、原作をそこを上手くアレンジし、構成で驚かせるよりも、「思い」を貫く事が、人の心を動かして運命を切り拓く様を見せる、力強いドラマを描く事に注力しているように感じました。
　「ヒーローは負けない。そして、自分の為には戦わない」
　だから、誰かの為に強くなる、と言う普遍的な物語を。

　ただ、ＳＡＢＵの映画でありがちな事であるのですが、会話のテンポが悪く、時にドラマが停滞するのは気になりました。
　また、中川大志＆石井杏奈の２人共、どうにも高校生に見えないのが困りもの――まぁ、石井杏奈についてはまだまだ学生役もオファーされているけれど、さすがに厳しくなって来たように思います。
　あと、出番が少ないながら清原果耶が印象的な役柄を演じてます。（うっす）
　

　（２０２１年　４月１１日　イオンシネマ座間にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ＳＡＢＵ

　■出演

濱田清澄　・・・　中川大志

蔵本玻璃　・・・　石井杏奈

（その他のキャスト）
　井之脇海　　清原果耶　　松井愛莉　　北村匠海　　矢田亜希子　　木野花　　原田知世　　堤真一

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