UNDERDOG
アンダードッグ
前編

　これは「百円の恋」の監督・武正晴、脚本家・足立紳ら製作陣が再集結し、”かませ犬”に落ちぶれたベテランボクサーを巡る人間ドラマ。
　配信作品として製作された連続ドラマを再編集した、劇場版の前編になります。
　主演は森山未來。共演に、北村匠海、勝地涼、瀧内公美、水川あさみと、配信作らしく豪華なキャストとなっています。

　ボクサーの晃は一度はチャンピオンベルトを懸けて日本タイトルマッチを戦ったものの、今や、かませ犬（＝アンダードッグ）としてリングに立つほどに落ちぶれてしまった――そんな晃に愛想を尽かして、妻は息子を連れて家を出、デリヘルの運転手兼用心棒として働きながら、惰性のようにリングに上がる……そんな晃が、二人のボクサーと宿命的に出会う。一人は、児童養護施設で晃と出会いボクシングに目覚めた、若き天才・龍太。
　もう一人は、大物俳優の二世タレントながら鳴かず飛ばずという半人前の芸人で、自身の引退を懸けた番組の企画でボクシングに挑んでいる宮木。
　晃は、宮木の芸能界引退を懸けたエキジビションマッチを己の引退試合と決めてリングに上るが……

　この映画版ですが、元の連続配信ドラマを整理し切れておらず、幾つものエピソードが並行する内容に加え、主人公である晃が寡黙なせいで、これだけの長尺であるにも関わらず、総集編らしさ丸出しで、物語が判り辛いのです……特に、多数登場する登場人物を紹介しなければならない前編の立ち上がりは、どうにもバラバラな印象を受けました。
　それでも、そんな導入部を乗り越え、物語が動き出すと、これはなかなか面白い――やはり、ボクシング映画に駄作なし、と言う所でしょうか――売れない芸人の宮木が、ボクシングをきっかけに人生を変える物語は確かに心打つものがあるし、そんな人生を賭けた拳が、ボクサーとしては格上の晃を追い詰めて行く展開には痛快さがありました。　
　

　（２０２０年　１１月２７日　イオンシネマみなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督

武正晴

　■出演

　末永晃　・・・　森山未來

　大村龍太　・・・　北村匠海

　宮木瞬　・・・　勝地涼

（その他のキャスト）
　瀧内公美　　熊谷真実　　水川 あさみ　　冨手麻妙　　萩原みのり　　新津ちせ　　友近　　秋山菜津子
　芦川誠　　二ノ宮隆太郎　　上杉柊平　　清水伸　　坂田聡　　徳井優　　佐藤修　　山本博　　松浦慎一郎
　竹原慎二　　風間杜夫　　柄本明

　■コピー

無様に輝け。

［戻る］