泣く子はいねぇが

　これは、是枝裕和率いる映像制作者集団「分福」の新人・佐藤快磨のオリジナル脚本による長編デビュー作。
　出演は仲野太賀。共演は吉岡里帆、寛一郎。

　秋田県男鹿市。娘が生まれてデキ婚をしたたすくだったが、父親の自覚を持つことができずにいた。妻のことねは、そんなたすくに愛想を尽かしつつあったが、それを決定的にする事が起きる。
　大晦日の夜、「泣く子はいないか」とナマハゲが男鹿の街を練り歩く。その最中、全裸のナマハゲが、生中継のニュース番組で全国に放送される事件が起きてしまう。その正体は、泥酔しきったたすくだったのだ……

　これは、大人になれなかった男が、現実に向き合う物語、と見ればよいでしょうか？――それにしても、この種の地方協賛型の映画で、こうも地方を腐してよいのか、と言うのは気になる所ですが……

　地方社会……所謂“ムラ社会”では、個を殺し、縦社会の中で仮面を被って長老の言うが通りに動いていれば一人前と認められる――その仮面の象徴がナマハゲなのです。
　そこで居場所をなくした男が逃げ出し、舞い戻るも、そこに既に居場所はなく、今度は己の意思で仮面を被る――二度とここで暮らす事は出来ないと覚悟を決めて……これは、そんな物語なのです。
　果たして、秋田は、そんな閉鎖的なムラ社会だと描かれてよかったのでしょうか？

　仲野太賀は、なかなかのハマリ役と思いますが……それにしても、大人になり切れず、言いたい事が言えない男と言うのが、「生きちゃった」の主人公と重なります……確かに、巧く演じているとは言え、こうした役ばかり演じていると、そうした“色”がつくんじゃないかなぁ……そんな所も気になってしまいました。　
　

　（２０２０年　１１月２２日　１０９シネマズ川崎にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

佐藤快磨

　■出演

たすく　・・・　仲野太賀
　
ことね　・・・　吉岡里帆

（その他のキャスト）
　寛 一 郎　　山中崇　　余貴美子　　柳葉敏郎　　田村健太郎　　古川琴音　　松浦祐也
　師岡広明　　高橋周平　　板橋駿谷　　猪股俊明

　■コピー

金も、
仕事も、
自信も、
自分も、
何もない。
こんな俺でも、父親になれますか？

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