これは、少年が自ら発案した料理で家族の絆をつなぐ物語。
　監督は、ブラジル人のフェルナンド・グロスタイン・アンドラーデ。

　ブルックリン生まれの１２歳の少年エイブは、イスラエル人の母とパレスチナ人の父を持ち、文化や宗教の違いから対立する家族にいつも悩まされている。
　そんなエイブの最大の関心時は食事と、そして、料理を作ることだった。夏休み、イベント会場で食べ歩きをしていたエイブは、世界各地の味を掛け合わせたフュージョン料理を作るブラジル人シェフのチコと出会う。
　エイブはフュージョン料理を自身の複雑な背景と重ね合わせ、自分にしか作れない料理で家族を一つにしようと決意するが……

　この映画が描くのは、他民族国家であるアメリカの問題を、家庭内に持ち込み、それを「食」で解決しよう、と言う物語。着眼点は悪くないと思いますが、食文化と民族対立は別、と言う感覚の日本人からすると、それで上手く行くか？と端から疑問が湧いてしまいました。
　また、ユダヤ料理と、パレスチナ料理に馴染がなく、メニューを言われても、それがどんなものなのか理解出来ないのがちょっともどかしく思えてしまったり……

　クライマックスの対立からの破綻、そして和解、と言う展開には、ちょっとすっきり来なかったと言うのが正直な所――あれじゃ、エイブの料理には意味が無かった、と言うようなものではないか、と……


ＰＳ
　劇中でエイブが言う、味覚の５要素「塩味、甘味、酸味、苦味、うま味」……この「うま味」は英語でも「ＵＭＡＭＩ」なのですね。
　それにしても、味覚を５要素で語るとは……と思っていたら、この映画、協賛は「味の素」でしたか。なるほど。　
　

　（２０２０年　１１月２１日　Ｋｉｎｏシネマ横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督

フェルナンド・グロスタイン・アンドラーデ

　■出演

　エイブ　・・・　ノア・シュナップ

　チコ　・・・　セウ・ジョルジ

（その他のキャスト）
　ダグマーラ・ドミンスク　　アリアン・モーイエド　　マーク・マーゴリス　　トム・マーデロシアン　　セーラム・マーフィー　　ダニエル・オレスケス

　■コピー

僕にしか作れない
たった一つの家族のレシピ――

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