ジオラマボーイ
パノラマガール

　これは、岡崎京子が１９８９年に刊行した同題コミックを、「PARKS　パークス」の瀬田なつき監督が映画化したもの。
　出演は、「小さな恋のうた」の山田杏奈、ドラマ「３年A組−今から皆さんは、人質です−」の鈴木仁。
　
　東京・湾岸の集合住宅に暮らす１６歳の高校生・渋谷ハルコは、ある日、お使いの帰りに、橋の上で倒れていた神奈川ケンイチと出会い、一目惚れをする。
　ハルコは“運命の恋”だとはしゃいでいたが、一方のケンイチは、受験を目前に控え、衝動的に学校を辞めてしまった直後、しかも、高校中退後に勢いでナンパした危険な香りのする女、マユミに夢中になっていた……

　岡崎京子のコミックは、これまで「ヘルタースケルター」、「リバーズ・エッジ」など、岡崎作品のどろどろとした、重い情念にスポットを当てて映画としていましたが、この映画は、ふわりと軽い感じに仕上げて来ました。
　原作コミックでは、バブル期の東京郊外のニュータウンを舞台としていましたが、映画は、舞台を東京湾岸地区に変更。東京五輪に向け、選手村として建設され、将来はタワーマンション群となる晴海の再開発地区を舞台に、正に、今しか撮れない東京の“ニュータウン”を舞台として、物語を再構築。
　主人公ふたりも、初めての恋に右往左往する高校生としています。
　
　実写映像でありながら、奇妙な余白感を感じさせる絵作り、モノローグの多用など、これは正に実写映像の少女マンガで、瀬田なつき監督のセンスを感じる部分です。
　そのスタイリッシュな映像、危うさと脆さを抱え込んだ刹那的な登場人物は、正に岡崎京子の作品世界――見事な岡崎京子作品の実写映画化だと思いますが……気になるのは、現在が１９８０年代ではなく、２１世紀だと言うこと。時代を切り取って来た岡崎京子作品だからこそ、それを今、現在、こうして作品とする意味が希薄に思える事です。　
　

　（２０２０年　１１月　７日　１０９シネマズ川崎にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

瀬田なつき

　■出演

渋谷ハルコ　・・・　山田杏奈

神奈川ケンイチ　・・・　鈴木仁

（その他のキャスト）
　滝澤エリカ　　若杉凩　　平田空　　持田唯颯　　きいた　　遊屋慎太郎　　斉藤陽一郎　　黒田大輔
　成海璃子　　森田望智　　大塚寧々

　■コピー

成長するだけじゃ、
オトナになれない。

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