これは、第二次世界大戦で英国の捕虜となったドイツ兵が終戦後、困難を乗り越えて英独を結ぶ平和の架け橋として活躍した実話を映画化したもの。
　監督・脚本は、マルクス・H・ローゼンミュラー。出演は「愛を読むひと」のデヴィッド・クロス、「サンシャイン／歌声が響く街」のフレイア・メーバー。

　１９４５年、ドイツ軍兵士だったバート・トラウトマンはイギリス軍の捕虜となる。
　ある日、捕虜収容所でサッカーをしていたバートは、地元の弱小サッカークラブの監督の目に留まり、ゴールキーパーとしてスカウトされる。そして、バートは、クラブを地区リーグ残留に導くのだった。
　やがて、バートは、地元の名門サッカークラブ「マンチェスター・シティ」に誘われるのだが、彼には誰にも打ち明けられない“秘密の過去”を抱えていて……

　これは、これまでサッカーファン以外には存在を知られていなかったバート・トラウトマンの激動の人生を描く伝記映画。
　物語の軸にあるのは、戦争による憎悪の感情を、人として、如何に収め、赦しを与えるのか、と言う事。そして、英独の“戦後”を導いた男の生き様を描き、過去に囚われずに歩み出すと言う感動的なものなのですが……この映画、バートがイギリスで過ごした１９４５年からの１０年以上のエピソードを２時間の映画にまとめる、その取捨選択が首を傾げるものとなっているのです。
　結婚や、マンチェスター・シティ入団テストなど盛り上がりそうなエピソードが省かれているのは理解に苦しみますし、ユダヤ人も多いマンチェスターで、バートが如何にして市民の支持を得たのか、と言う重要な部分が大幅に端折られてしまっています。

　また、物語としても、戦時に敵国同士だった男女の恋愛に重きを置くのはいささか陳腐なように思えましたし、その一方で、サッカーの面白さや、技術描写の乏しさは、正直、物足りなく感じます。
　当時の様子を丁寧に再現して描く映像は美しく、感動の人間ドラマとしての後味は悪くありませんが、映画としては今一つに思えてしまいました。　
　

　（２０２０年　１０月２４日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

マルクス・H・ローゼンミュラー

　■出演

　バート・トラウトマン　・・・　デヴィッド・クロス

（その他のキャスト）
　フレイア・メーバー　　ジョン・ヘンショウ　　デイヴ・ジョーンズ　　ハリー・メリング　　マイケル・ソーチャ　　ジュリアン・サンズ
　バーバラ・ヤング　　クロエ・ハリス　　マイキー・コリンズ　　ゲイリー・ルイス　　デヴラ・カーワン

　■コピー

その手が、戦いを愛に変えた。

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