マーティン・エデン

　これは、「野生の呼び声」で知られるアメリカの作家、ジャック・ロンドンの自伝的小説「マーティン・イーデン」を、イタリアを舞台に蘇らせたヒューマンドラマ。　
　監督は「失われた美」のピエトロ・マルチェッロ。
　主人公マーティンを演じるルカ・マリネッリは、本作でヴェネツィア国際映画祭主演男優賞を受賞しています。

　ナポリの労働者地区で生まれ育った貧しい船乗りのマーティン。ある日、港でブルジョワの青年を救い、お礼にと家に招かれたマーティンは、そこでエレナに出会い、恋をする。そして、エレナの家で手にした詩集の言葉によって、文学の世界に引き込まれるのだった。
　マーティンは、エレナに近づく為に、教養を身につけたいと思うが、小学校もまともに出ていないマーティンには、教養が基礎が欠落していた。学校に入り直す事も出来ず、独学で作家を志すマーティンだったが、生活は困窮し、エレンの理解も得られない。
　だが、ある事をきっかけに彼の運命は一変する――

　ジャック・ロンドンの自伝的小説である原作の舞台を、２０世紀当初のアメリカから、第二次大戦後のイタリアに置き換えると言う大胆な脚色で生まれた本作。
　時代と舞台を改変した上で、社会格差や、教育と才能、と言う、現代に通じるテーマを盛り込んだ意欲的なアレンジをしていますが、それを支えるのが、やはりジャック・ロンドンの原作の力強さ、と言う所でしょうか？

　富や名声、教養と言うものが、社会の中で生きる為の“武器”にはなるけれど、それは必ずしも人を幸せにはせず、特に人を傷つけるものになってしまう、と言うシニカルな物語、主演のルカ・マリネッリの男の色気、１６mmフィルムで撮影して拡大したと言う’７０年代映画を思わせるような映像、当時の記録映像や映画フィルムを繋ぎに使う、編集の巧みさなど見所も多い映画ですが、正直、自分には、これはちょっとピンと来なかったなぁ……　
　

　（２０２０年　１０月１２日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

ピエトロ・マルチェッロ

　■出演

　マーティン・エデン　・・・　ルカ・マリネッリ
　
　エレナ・オルシー　・・・　ジェシカ・クレッシー

（その他のキャスト）
　デニーズ・サルディスコ　　ヴィンチェンツォ・ネモラート　　カルロ・チェッキ　　マルコ・レオナルディ
　カルメン・ポンメラ　　エリザベッタ・ヴァルゴイ

　■コピー

「絶望」の青春

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