スペシャルズ！

　これは、「最強のふたり」の監督コンビ、エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュによる実話に基づくヒューマンドラマ。
　主演は、ヴァンンサン・カッセル。

　ブリュノが経営する自閉症児をケアする施設「正義の声」は、無認可施設ながら、どんな状況の子供も断らないために、各所で見放された重度の自閉症の子供たちでいっぱいだった。
　「正義の声」では、ブリュノの友人であるマリクによる、ドロップアウトした若者たちの更生団体と連携し、更生中の若者たちへ、患者の介護の仕事を提供していた。そうして、ふたりは、社会からはみ出した子供たちをまとめて救おうとしていたのだ。
　しかし、無認可・赤字経営の「正義の声」に行政の監査が入ることになり、施設に閉鎖の危機が迫っていた……

　障害児と、問題を抱える若者、と言うふたつの社会問題に同時に取り組む実話に基づくドラマは、確かに見応えがありますし、自閉症の少年と、ドロップアウトした黒人青年のふたりの関係を、もうひとつの軸とした構成も悪くはありません。
　ただ、そうしてドラマを作るのであれば、「最強のふたり」のような感動も見せて欲しかった所です。また、ドラマを作る中で様々なエピソードを盛り込み過ぎた感があり、未消化な部分も散見されます。
　また、無認可施設に対する行政の締め付けを理不尽なものと描いているのですが、それはいささか一方的な見方ではないか、とも思ってしまいました――現実に、貧困ビジネスなどの弱者を食い物とする業者も跋扈している以上、やはり行政による監視や規制は必要でしょうから。

　ただ、「全ての人には幸せになる権利がある」の信念の下、全てを擲ち、笑顔を作る為に奮闘するブリュノ、そして、それに共感して共に働く人々の姿には心を打たれます。これこそ、相互に支え合う人間としてあるべき姿でしょう。
　そんなブリュノの信念こそ、福祉に必要なものでしょう。だからこそ、「俺は無資格だが、資格さえあれば彼らの面倒を見られるのか？」と言うブリュノの言葉には反論出来ず、病院や裁判所も、「彼らが正しかった」と認めているのです。
　そして、そんな現実を知ったからこそ、「他に行政として代替手段を講ずる事が出来ない」のでやむを得ないと弁明しつつも、「正義の声」の活動を無認可のまま容認する、としたフランスの福祉行政の懐の深さにも感心しました。　
　

　（２０２０年　９月１２日　Ｋｉｎｏシネマ横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

エリック・トレダノ　　オリヴィエ・ナカシュ

　■出演

　ブリュノ　・・・　ヴァンサン・カッセル
　
　マリク　　・・・　レダ・カテブ

（その他のキャスト）
　エレーヌ・ヴァンサン　　ブライアン・ミアロンダマ　　アルバン・イワノフ　　ベンジャミン・レシュール　　マルコ・ロカテリ　　カトリーヌ・ムーシェ

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