宇宙でいちばんあかるい屋根

　これは、野中ともそによる同名小説を「新聞記者」の藤井道人監督が映画化したもの。
　主演は、これが映画初主演となる清原果耶。共演は桃井かおり。

　中学生の大石つばめは、幸せな生活を送っているように見えたが、血の繋がっていない母親との間に子供ができると知り、疎外感を感じ始めていた。
　学校も居心地悪く、憧れの隣家の大学生・亨にも気持ちを伝えられず、もどかしい日々を過ごすつばめにとって、通っている書道教室の屋上が唯一の憩いの場であった。
　ある夜、いつものように屋上に上がったつばめは、カラフルな布をまとった老女と出会う。不思議な雰囲気を漂わせるその老女・星ばあに、つばめはふと恋の悩みを打ち明ける。口は悪いが、表裏のない星ばあにつばめは次第に心を開き、距離を縮めていくが……

　これは、１４歳、身の回りの些細な事が重大事となってしまう女子中学生が、不思議な老女から人生の大事な事を教わる、ひと夏の成長譚……決してドラマティックではないものの、つばめにとっては正に人生の転機となる物語を丁寧に描くドラマは悪くないです。
　ただ、藤井道人監督、「新聞記者」でも見せた現実味を欠く場面演出が本作でも見られたのはちょっと残念――この映画だと、町の夜景が明るすぎるのです。まぁ、セット撮影の屋上とのバランスを見た結果でしょうが、あれはちょっとやりすぎではないでしょうか？

　清原果耶は、初主演に加え、主題歌も歌うなど正に映画を背負った感があります――もっとも、１４歳にしてはちょっと大人びていやしないか、と思いましたが……あと、彼女、前髪を斜めに切りそろえているのは狙いなのでしょうか……？片側だけ眉が見え、斜に構えたというか、ちょっと顔が歪んでいるかのように見えてしまったもので……
　星ばあを演じた桃井かおりは、堂々の存在感で文句なし。
　あと、特筆すべきは最近人気の伊藤健太郎。この映画でも脇役として清原果耶を支える役回りを務めます。「惡の華」、「のぼる小寺さん」……それに「今日から俺は」と、個性的な主役を引き立て、観客に受け入れさせる……定食における白米飯のような役が実にハマる、面白い存在感の役者だと思います。　
　

　（２０２０年　９月　４日　ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

藤井道人

　■出演

　大石つばめ　・・・　清原果耶

　星ばあ　・・・　桃井かおり

　朝倉亨　・・・　伊藤健太郎

（その他のキャスト）
　吉岡秀隆　　坂井真紀　　水野美紀　　山中崇　　醍醐虎汰朗

　■コピー

ねぇ星ばあ、
私はどんな屋根の下で生まれたんだろう――

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