これはイタリアの名匠、マルコ・ベロッキオ監督が、マフィアの掟を破ったパレルモ派の大物を描いた伝記ドラマ。
　イタリアのアカデミー賞と呼ばれるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞にて作品賞など６部門を受賞。カンヌ映画祭や、米・アカデミー賞にもイタリア代表として選出された作品です。

　１９８０年代初頭、シチリア。マフィアとして知られる犯罪組織“コーザ・ノストラ”の新旧世代間の争いが激化。古きコーザ・ノストラの精神を受け継ぐ組織のドン（首領）、トマーゾ・ブシェッタだが、女子供にも容赦せずに一族皆殺しの抗争でのし上がって来たコルレオーネ派の懐柔に失敗。ブシェッタと妻子は、ブラジルに逃れたものの、イタリアに残した息子たちや親族を殺されてしまう。
　ブシェッタはブラジルで逮捕。イタリアに引き渡され、そしてマフィア撲滅に執念を燃やすファルコーネ判事から捜査協力を求められる。ブシェッタはコルレオーネ派の台頭で堕落したコーザ・ノストラに失望しており、捜査に協力する事になるが……

　これは、旧世代のドン、トマーゾ・ブシェッタの告白により、３６６名もの逮捕者を出した実話に基づく実録ドラマ。
　犯罪組織の新旧世代対立、と言う事ですが、これは、日本における任侠道の渡世人とヤクザの差、と言うように考えればよいでしょうか……この映画では、老人を敬い、カタギと女子供には手を出さないコーザ・ノストラと、一族郎党皆殺しのマフィアと言うように対比されて描かれていました。
　映画は、そんな自らを「誇り高い男」と言う旧世代のトマーゾ・ブシェッタが、息子や仲間を殺された報復に、司法の手を借りてコルレオーネ派を追い詰めて行くものとなります。

　血生臭い抗争場面も描かれるが、裁判シーン――受刑者を格子ごしに同席させるイタリアの裁判の様子が興味深い――も多く、映画としてはむしろ叙情的にブシェッタの半生を描き出します。
　ただ、そんな物語を描くのに、撮影はフィルムではなくビデオ撮影で、妙につるん、とした映像には違和感を覚えました。’８０年代と言う時代からしても、ざらついたフィルム・ノワール風の映像が合うように思うのですが……

　登場人物は多く、時間軸も行ったり来たりするので、物語の流れを把握するだけで一苦労……これは、予備知識がないと厳しいかも知れません。
　また、１５２分と言う長尺のせいもあり、中盤にはついうとうとしてしまいました。　
　

　（２０２０年　８月３１日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

マルコ・ベロッキオ

　■出演

　トマーゾ・ブシェッタ　・・・　ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ
　
　ジョヴァンニ・ファルコーネ　・・・　ファウスト・ルッソ・アレジ

（その他のキャスト）
　ルイジ・ロ・カーショ　　マリア・フェルナンダ・カンディド　　ファブリツィオ・フェラカーネ　　ジョヴァンニ・カルカーニョ

　■コピー

真のプライド。
　そのために男は命を賭けた――。

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