ソワレ

　これは、小泉今日子、豊原功補らが設立した制作会社・新世界合同会社の第１回プロデュース作品。
　出演は「楽園」の村上虹郎、「＃ハンド全力」の芋生悠。監督は、新世界合同会社の設立メンバーでもある外山文治。

　役者を目指して上京した翔太だが、芽の出ないまま東京で燻り、いつしか特殊詐欺の受け子などの裏稼業で生計を立てるようになっていた。
　ある夏、所属する劇団が、演劇を教えるため、翔太の故郷に近い和歌山の高齢者施設を訪れる。
　だが、施設職員の山下タカラが引き起こした事件に出くわした翔太は、彼女と先の見えない逃避行に出ることになって……

　映画は、紀州・和歌山を舞台に、若い男女を“父殺し”と言う壮絶な状況の下で逃避行に走らせます。
　最近のキラキラ映画ばかりが目立つ日本映画の中では刺激的な内容ですし、台詞でくどくど語らず風景に心象を語らせるのも新鮮です。

　屈折した若者を演じさせれば抜群の村上虹郎が翔太を演じ、その芝居は期待通りですが、ヒロインのタカラを演じた芋生悠は予想以上。血塗れから汗まみれとなり、出演シーンの殆どをすっぴんで通していますが、逃避行が続き、疲れ果てぼろぼろになって行くのに反し、輝きと存在感が増して行くのです。ちょっと癖のある顔立ちで正当派の美人ではありませんが、これはこの先、“化ける”のではないでしょうか。

　惜しいのは、舞台が紀州・和歌山ということで安珍・清姫伝説を引用しているのですが、これが上手く活かされていないように思えること。
　ただ、翔太の演技が心に残るものになっていた事が示されるエピローグにはぐっと来てしまいました。　
　

　（２０２０年　８月３１日　Ｋｉｎｏシネマ横浜みなとみらいにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

外山文治

　■出演

　岩松翔太　・・・　村上虹郎

　山下タカラ　・・・　芋生悠

（その他のキャスト）
　岡部たかし　　康すおん　　塚原大助　　花王おさむ　　田川可奈美　　江口のりこ　　石橋けい　　山本浩司

　■コピー

［戻る］