これは、欧州で話題となった舞台劇「名前」を映画化したドイツ映画。
　出演は「１００日間のシンプルライフ」のフロリアン・ダーヴィト・フィッツ、「帰ってきたヒトラー」のクリストフ・マリア・ヘルプスト。監督は「ベルンの奇蹟」のゼーンケ・ヴォルトマン。

　文学教授のステファンと、妻エリザベスの夫妻が、エリザベスの弟で、実業家のトーマス夫妻と、幼馴染の音楽家レネを自宅に招いてディナーを共にする事になった。
　舞台女優であるトーマスの妻は現在妊娠中で、生まれて来る子供の話題となった際、トーマスが生まれて来る子供の名前を“アドルフ”にすると告げた事から、思わぬ騒動となってしまい……

　これは日本ではなかなか観る機会の少ないドイツのコメディ映画。元の舞台劇の知名度も高くはないのですが、とにかくタイトルに「ヒトラー」と入ればドイツ映画は公開される、と言うのも変な風潮ではないでしょうか？――まぁ、本作では姓のヒトラーではなく名のアドルフの方ですが。
　
　映画としては、舞台劇を元にするだけに、ほぼステファンの家内だけで展開するワンシチュエイションの会話劇。
　子供の名付け問題を入り口に始まった口論が発展、すれ違いに行き違い、その中で思わず漏れた本音がまた火を点けてしまい……と言う展開は会話劇としては手堅い作り。同様にディナーの場での何気ないひと言が波乱を呼ぶ会話劇「おとなの事情」の様に、最後は風呂敷の畳みようがなくなって、「なかったこと」としてまとめるような破綻もなく、最後には、ちゃんとオチもついた大団円を迎えます。
　その中に、ドイツ人のインテリらしい理詰めの論戦があったかと思えば、爆弾のつもりで投げ込んだネタが不発に終わって、肩すかしを食わされるなどもあって、確かに面白く、よく出来ています。
　ただ、それ故に小さくまとまってしまった感もあるのですが……　
　

　（２０２０年　７月２３日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督

ゼーンケ・ヴォルトマン

　■出演

　トーマス　・・・　フロリアン・ダーヴィト・フィッツ

　ステファン　・・・　クリストフ＝マリア・ヘルプスト

　エリザベス　・・・　カロリーネ・ペータース

（その他のキャスト）
　ユストゥス・フォン・ドーナニー　　ヤニーナ・ウーゼ　　イリス・ベルベン

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