これは、上海国際映画祭で審査員大賞・最優秀脚本賞を受賞した映画。
　監督は「草原の河」のソンタルジャ。

　四川省の山村で、夫のロルジェと共に暮らすウォマ。
　病院で、ある事実を告げられたウォマは、チベット仏教の聖地ラサへの五体投地での巡礼に一人で行くと決意する。五体投地では１日５kmほどしか進めない。１０００kmを超える道程に半年以上もかかる巡礼の旅だった。
　やがて、ウォマの後を追うようにロルジェも出発。そして実家に預けられていた、ウォマの前夫との息子ノルウも母に会う為にやって来る。だが、嫉妬や、わだかまりを抱えながら進む親子の旅路半ばにして、ウォマが倒れてしまい……
　
　「五体投地」とは、念仏を唱えながら数歩歩く度に大地に全身を投げ出し、感謝を示すチベット仏教の巡礼作法のこと。
　ただ、本作は、タイトルが示すそんなチベット仏教の巡礼の習わしよりも、家族の再構築に重きを置いたロードムービー、と言うべき内容となっています。
　母に棄てられたと思う子供と、血の繋がらない子供に戸惑う父……そうした問題を解決するのが宗教ではない、と言う部分は現代的と言うか、中国らしいと言うべきでしょうか……

　もっとも、ロードムービーとしては起伏に欠けますし、人間ドラマとしてもウォマの心境がなかなか理解し辛くもあり、これは感情移入がなかなか難しい……単調なテンポに、正直退屈する事もありました。
　ただ、あまり観る事の少ないチベット自治区の雄大かつ荒涼とした風景と、巡礼と言うそこに暮らす人々に染みついた慣習は興味深いものがありました。　
　

　（２０２０年　７月　７日　シネマジャック＆ベティにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ソンタルジャ

　■出演

　ウォマ　・・・　ニマソンソン

　ロルジェ　・・・　ヨンジョンジャ

（その他のキャスト）
　スィチョクジャ　　ジンバ

　■コピー

はるか昔から人々が祈り歩きつづけた巡礼の道。
いま妻から夫へ　父から息子へ
過去をのりこえ　こころをつなく。

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