弥生、三月
君を愛した３０年

　これは、「恋妻家宮本」の遊川和彦監督による、ある男女の３月に起きた出来事を３０年分紡ぐラブストーリー。
　波瑠と成田凌のＷ主演で、二人の親友・さくらを杉咲花が演じています。

　１９８６年３月、運命的に出会った高校生の弥生と太郎。お互いに強く惹かれあったのだが、親友のさくらが病死したことで思いを伝えられないまま、ふたりは別の人生を歩んで行く事になる。
　それぞれ別の人と結婚し、家族が出来て……だが、何時しか夢破れ、災害に巻き込まれ――希望を見失った時、亡き友、さくらからのメッセージが届く……

　この映画は、３０年に及ぶ大河恋愛メロドラマ。
　この構成には既視感あります……これは、２人の恋物語を１年のうちのある１日だけで描いた「ワンデイ」と同じなのです。
　ただ、本作は日本ならではの要素として、東日本震災の“３．１１”を盛り込みました。
　そうすると、「ワンデイ」のように“ある１日”で固定する訳にはいきません（その印象が強くなり過ぎ、作品が支配されてしまうでしょう）。そこで、て“ワンデイ（ある１日）”ではなく、”三月”にした、と言う訳でしょう。
　お手本となった映画があったとは言え、時代の背景も巧みに取り込みつつ、なかなか感動的な物語としています。

　ただ、本作の演出には、いささか作為的なものを強く感じました――バスを追いかける、乗り遅れる、と言う描写が再三繰り返される辺りや、さくらの好きだった歌の使い方など……
　また、さくらが２人のキューピットになるのは判りますが、そうすると、さくらの残したテープの扱いはいささか中途半端ではないでしょうか。
　３月に縛られた２人のメロドラマ……それが、桜咲く４月を迎えて新たに動き出す、と言うエンディングもいささか作り過ぎのように思えます。

　キャストはやはり波留がいいです。弥生と言う頑なに正義を貫くヒロインを演じるのに、その硬質な美貌が見事にあっています。
　また、３０年の時代経過を描くうちで、現在（４７歳！）の弥生の老けメイクはよくやったなぁ、と（実際に４０過ぎに見えます）。ただ、その後、老けメイクを止めてしまい、最後に若返ってしまうのには違和感がありました。　
　

　（２０２０年　３月２５日　にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

遊川和彦

　■出演

　結城弥生　・・・　波瑠

　山田太郎　・・・　成田凌

　渡辺サクラ　・・・　杉咲花

（その他のキャスト）
　岡田健史　　小澤征悦　　黒木瞳　　岡本玲　　夙川アトム　　矢島健一　　奥貫薫　　橋爪淳

　■コピー

３０年間、
ずっとどこかで、
あなたのことが
好きだった

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