カツベン！

　これは、「Ｓｈａｌｌ　Ｗｅ　 ダンス？」の周防正行監督の新作。無声映画上映時に作品の内容を解説する活動弁士を取り上げた青春喜劇。
　主演は、「愛がなんだ」の成田凌。共演は、黒島結菜、永瀬正敏、竹中直人ら豪華キャストとなっています。

　一流の活動弁士を目指す俊太郎は、隣町のライバル館に客も人材も取られてすっかり寂れてしまった小さな映画館・青木館に流れ着く。
　人使いの荒い館主夫婦、傲慢な弁士に酔いどれ弁士、気難しい映写技師など、曲者揃いの青木館で、雑用ばかり任される俊太郎。そんな彼の前に、大金を狙う泥棒、泥棒とニセ活動弁士を追う警察、そして幼なじみの初恋相手が現れて……

　本作の中には、「椿姫」や「金色夜叉」、と言う名作を再現した無声映画が登場しますが、これは決して、日本の無声映画時代の徒花であり、独自の映画文化とも言える“活動弁士”の活動を今に伝える史実的な映画では収まりません。これは、映画が娯楽の王様であった時代の活力と、それを背景とした、スクリューボールコメディとしたいと言うのが、周防正行監督の狙いであるようです。
　確かに、なかなか良く出来ているとは思うし、娯楽に振っているからこその面白さもあります。そして、勿論、史実して、映画好きをくすぐる興味深い部分もあるのです。
　ただ、ここが周防監督の真面目さ故でしょうか、思った程には、物語が弾まない印象……ドタバタ劇ではあるのですが、コメディ全振りと言う訳ではなく、人情ものにもならず、強いて言えば青春ロマンスなのだけど、そうだとすると恋愛要素が薄い……何をやりたいのかがはっきりとせず、物語と主人公が終盤まで迷走する感じなのです。
　そして、最大の問題はラストだと思います、観客としては、やはり映画だから夢を見させて欲しいのですが、最後があれでは……
　せっかく、あの場面に列車が来ているんだから、俊太郎がそれに飛び乗り、追おうとする警官隊を刑事が止め、
　「あれはニセ弁士なんかじゃない。本物だ」
　で終劇にしていいじゃないか、と思うのですが……　
　

　（２０１９年　１２月１５日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督

周防正行

　■出演

　染谷俊太郎　・・・　成田凌

　栗原梅子　・・・　黒島結菜

　青木富夫　・・・　竹中直人

（その他のキャスト）
　永瀬正敏　　高良健吾　　井上真央　　音尾琢真　　竹野内豊　　渡辺えり　　
　小日向文世　　徳井優　　田口浩正　　正名僕蔵　　成河　　森田甘路
　酒井美紀　　シャーロット・ケイト・フォックス　　上白石萌音　　城田優
　草刈民代　　山本耕史　　池松壮亮

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