英雄は嘘がお好き

　これは、「おとなの恋の測り方」のローラン・ティラール監督による、１９世紀初頭、戦争に関わる巨大詐欺事件にヒントを得た、ロマンティック・コメディ。
　「アーティスト」のジャン・デュジャルダンと、「黄色い星の子供たち」のメラニー・ロランのＷ主演で、共演は、「奇跡の教室　受け継ぐ者たちへ」のノエミ・メルラン。

　１８０９年、フランス・ブルゴーニュ。出征した戦地から帰らない婚約者のヌヴィル騎兵大尉をを待ち続ける妹のポリーヌを気の毒に思ったエリザベットは、ヌヴィル大尉になりすまして書いた偽りの手紙を妹に届ける。
　エリザベットには妙な文才があり、ついつい筆も滑って、手紙の中でヌヴィル大尉は奇想天外な冒険を行った英雄になってしまった。
エリザベットは、最後、大尉が戦死した事にしたのだが、その３年後、ヌヴィル大尉が舞い戻って……

　この映画、気の強い女とだらしない男と言う定番なふたりのよくある艶笑喜劇、と思っていたら、これが、思わぬ方向に転がって、予想外の展開を見せる事になるのにはびっくり。
　「英雄は環境が作る。その逆はない」
　と言う意味深な台詞があるのですが、実はその通り、エリザベットの嘘が生んだ“環境”に、口先だけで調子のいいヌヴィルが適応し、最後には本当に戦場の英雄となってしまうクライマックスは痛快です。そして、ハッピーエンドと見せかけてもう一捻りする辺りがフランス映画ならではの仕掛けでしょうか。

　エリザベットを演じたメラニー・ロランは、本作でコメディ初挑戦。本作では、騒動の仕掛け人でもあるトリックスターとして物語を動かしながら、美しく、知的で、それでいて乙女な表情も見せて、映画をチャーミングに支えます。
　ただ、この映画、最後は、そんな聡明なエリザベットがヌヴィル大尉のネズミ講紛いの詐欺に乗る、と言う展開になるのがどうにも腑に落ちず……最後が、画竜点睛と行かない感じでした。　
　

　（２０１９年　１０月１１日　横浜ブルク１３にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ローラン・ティラール

　■出演

　エリザベット　・・・　メラニー・ロラン

　ヌヴィル騎兵大尉　・・・　ジャン・デュジャルダン

　ポリーヌ　・・・　ノエミ・メルラン

（その他のキャスト）
　クリストフ・モンテネーズ　　フェオドール・アトキン

　■コピー

帰らなくてよかったのに……帰って来ちゃった！

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