蜜 蜂 と 遠 雷

　これは、２０１７年に直木賞と本屋大賞をダブル受賞した恩田陸による同名小説を映画化したもの。監督は「愚行録」の石川慶。
　出演は、松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士。オリジナル楽曲「春と修羅」を国際舞台で活躍する藤倉大が作曲し、作中の演奏はピアニストの河村尚子、福間洸太朗、金子三勇士、藤田真央が担当しています。

　若手ピアニストの登竜門として世界から注目を集める芳ヶ江国際ピアノコンクール。７年ぶりの復帰となるかつての天才少女・栄伝亜夜、ジュリアード音楽院に通うマサル・カルロス・レヴィ・アナトール、家族持ちの楽器店店員・高島明石、１６歳の謎の天才・風間塵らが予選に挑む。
　彼らはコンクールにて互いに刺激し合い、葛藤し、成長を遂げていく――その戦いの先に彼らを待ち受ける運命とは……

　この物語は、“才能”と言う表現の難しいものを描き出そうとする意欲作。
　自分には音感が欠けているだけに、そんな人間にも彼らの世界を見せ、そして感じさせようとする物語は新鮮に感じました。

　映画予告編からすると、４人の天才の競い合い、と言う感がありますが、実はこの物語は、松岡茉優演じる栄伝亜夜が中心となっています――ピアノの師でもあった母の死による見失っていた音楽を彼女が取り戻すエピソードが中心で、謎の天才・風間塵も、彼女の才能を蘇らせる為に遣わされたようなものなのです。
　コンクールでの勝敗を重視しない物語は、それはそれでよいのだけど、それならばエピソードはもう少し整理した方がよかったようにも思いました。

　演者としては、やはり松岡茉優がいい。表情演技が素晴らしく、クライマックスで見せる、才能の爆発は見物です――ただ、彼女、まだ若いのに笑うと目尻にカラスの足跡が出るのが気になったり……
　あと、ブルゾンちえみがいつものイメージをガラリと変えて登場しているのも意外でした。　
　

　（２０１９年　１０月　９日　ムービルにて）

（作品データ）

　■監督・脚本

石川慶

　■出演

　栄伝亜夜　・・・　松岡茉優
　高島明石　・・・　松坂桃李
　マサル・カルロス・レヴィ・アナトール　・・・　森崎ウィン
　風間塵　・・・　鈴鹿央士

　仁科雅美　・・・　ブルゾンちえみ

（その他のキャスト）
　臼田あさ美　　福島リラ　　眞島秀和　　片桐はいり　　光石研　　平田満　　アンジェイ・ヒラ
　斉藤由貴　　鹿賀丈史

　■コピー

私はまだ、
音楽の神様に
愛されているだろうか？

［戻る］