これは、各国の映画祭で数々の賞を受賞した、ユーチューバー出身の新鋭ボー・バーナム監督による青春映画。
　主演は、本作でゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされたエルシー・フィシャー。

　卒業間近の中学生ケイラ。学校では目立たず、「クラスで一番無口でした賞」を貰ってしまうなど、引っ込み思案で不器用な自分を変えようと、Ｙｏｕｔｕｂｅに動画発信したりするのだけど、全然「いいね！」を貰えない。そんな、どうにもならないもどかしさから来る怒りをぶつける相手は父親だ。
　そんなケイラが、クラスの人気者ケネディの母親から、プール開きパーティに招待されるが、やはり上手く行かない。
　だが、高校の体験入学で知り合った女子高生のオリヴィアに誘われて、一緒にモールに出掛けたケイラは……
　
　エース・グレードとは直訳すれば「８年生」。５年の初等と３年の中等課程に別れるアメリカでは中学最後の学年、と言う事になります。
　日本では、この年齢は正に「中二病」の盛んな時期で、映画はそんな中二病女子が、みんなから認められる特別な存在になろうと足掻き、冴えない現実とのギャップに苦しむ、と言うものになります。
　キラキラした生活を演出しつつ、現実にはスマホにかじりついているだけ、と言う彼女らの姿は時に滑稽であるけれど……これは、自身もユーチューバーであった監督ならでは自虐か同族嫌悪でしょうか……

　物語としては、誰にでも経験のあるようなもので、しかも、性や暴力に近寄らず、その意味では、子供にも安心して見せられるものになっていますが、それ故に小さくまとまってしまっている感があります。
　出来なかったことが出来るようになることだけが成長ではありません。出来なかったことが、やはり、自分には無理だと知るのも成長なのです。そんな“己を知る”事もまた、人生の一歩であり、それ故にこれもまた立派な青春映画ではあると思います。
　ただ、そんなカタルシスのない、ちょっとビターな内容を補う為に、ケイラを父子家庭の子とし、シングルファーザーの父との和解を盛り込んでいるのは、確かに感動的ではあるけれど、ちょっとあざとい、と見られるかも知れません。　
　

　（２０１９年　９月２１日　ヒューマントラストシネマ有楽町にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ボー・バーナム

　■出演

　ケイラ・デイ　・・・　エルシー・フィッシャー
　
　マーク・デイ　・・・　ジョシュ・ハミルトン

　オリヴィア　・・・　エミリー・ロビンソン

（その他のキャスト）
　ジェイク・ライアン　　ルーク・プラエル　　ダニエル・ゾルガードリ　　フレッド・ヘッキンジャー

　■コピー

“いいね！”の数は、
　わたしの価値じゃない

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