帰ってきた
ムッソリーニ

　これは、映画にもなったドイツのベストセラー小説「帰って来たヒトラー」に着想を得、舞台をイタリアに、そして蘇った独裁者をムッソリーニに置き換えて映画化したもの。

　イタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニ総帥。ヒトラーにも強い影響を与え、イタリアが１９４３年に連合国に降伏した後もイタリア社会共和国の指導者として君臨したが、１９４５年４月にパルチザンにより処刑された筈だった……が、そのムッソリーニが突然現代に蘇る。
　そんなムッソリーニに出会ったのは、売れない映像作家カナレッティ。偶然、ムッソリーニをカメラに収めたことからドキュメンタリー番組の制作を担当する事になった。そんな彼の活動により、ＴＶやネットに出演する事になったかつての総帥は市民に愛される人気者になっていくが……
　
　映画版の「帰って来たヒトラー」は既に鑑賞していますが、そのイタリア版となるこの映画も、物語はほぼ同じ展開となります――独裁者に扮した俳優が実際に街中を闊歩して、市民の反応を撮って行く、と言うドキュメンタリー的手法も同様ですが、ナチス党の扮装やそのスローガンを口にする事が憚られるドイツとは異なり、ムッソリーニのファシスト党には、市民側にそこまでの嫌悪感はないだけに、反応ははるかに好意的なものでした。
　一方で、政治や国内情勢がドイツより悪いイタリアでは、その分、現実の政治への批判が強く、そこにイタリア人が好む、男性的で力強く、単純明快な方針を示すムッソリーニが現われたら……と言う物語は確かに今こそ描く意味があると言うものでしょうか。
　その意味では、ブラックジョーク的だった「帰って来たヒトラー」に対し、こちらはより政治的なものとなり、それだけに笑うに笑えない部分がありました。　
　

　（２０１９年　９月２１日　ヒューマントラストシネマ有楽町にて）

（作品データ）

　■監督・脚本

ルカ・ミニエーロ

　■出演

　ベニート・ムッソリーニ　・・・　マッシモ・ポポリツィオ

　アンドレア・カナレッティ　・・・　フランク・マターノ

（その他のキャスト）
　ステファニア・ロッカ　　ジョエル・ディックス　　エレオノラ・ベルカミノ　　アリエラ・レッジョ　　マッシモ・デ・ロレンツォ　　ジャンカルロ・ラッティ

　■コピー

ヤツが現代に帰ってきた！

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